内容説明
ハワイ・南太平洋世界、すなわちポリネシア、メラネシア、ミクロネシアの島々に住む人々の神話には、日本の神話と類似したモチーフが発見できる。神話を南太平洋の自然現象、航海、農耕、漁撈、人々の生と死、社会と王権という具体的な脈絡のなかに置いてみると、そこに南太平洋の人々の生活と生活に根ざす世界観と思想が見える。本書は南太平洋の神話に生命を与え、同時に日本の神話や古代文化を南の海から照射する試みである。
目次
第1章 南十字星の下の海幸彦・山幸彦―日本と南太平洋神話の類縁性
第2章 虹を越えてきた神々―南太平洋世界の成立
第3章 生まれ来る精霊と言霊―南太平洋世界の神話
第4章 火山と虹の島―ハワイの自然と創世神話
第5章 太陽と海の恵み―作物と漁撈の神話
第6章 魂の行方―死の起源と死後の世界
第7章 陸に上がった鮫―王権の神話
第8章 南太平洋の彼方に
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マーブル
7
「海幸彦・山幸彦の話」はそっくりな神話がある。「釣針喪失神話」として広く分布している。また「浦島太郎」にそっくりなものも見られる。いずれも海に関係する内容だが、それ以外にも男女神が交合して様々なものを産み出したり、羽衣の代わりに腰布を隠して天女をものにする神話も存在する。 穀物の起源の神話が死んだ体から生えてきたもの、というのも同様だ。死んで穀物となるのが男であるのが多く思えるのに違いはあるが。この辺は、穀物の種類の違いなのか、もっと考察の必要がありそうだ。2019/01/20
\しおり/
0
神話論ではなく神話の本だと書いてあるけれど、色々な他の地域の神話と比較して分析されている。本文は、なぜ日本神話から始まるの!?と思ったけれど、焦点は常にハワイ神話から離れなかったようにその間には似通った部分が多い。神話では世界にほとんど同じものが多いけれど現代では異なるストーリーの小説や映画が次々と生まれているので、人間の創造性は進化したのかなと思った。2013/04/11
ishimps
0
台湾先住民を「高砂族」と留保なしに呼んでしまうセンスはいただけないが、陳列された文化をあくまで流して大枠をつかむだけなら使える本。2012/06/13