内容説明
鳥羽・伏見に発した戊辰戦争は、東国に戦場を移して各地に惨劇をもたらした。その波浪厳しいなかで誕生した明治新政府は、多くの矛盾を抱えつつ、近代化に向かって突き進む。しかし、性急な近代化は、日本興隆の道筋を作ったものの、伝統的美質の無惨な破壊、社会システムの歪みなどのリスクをも背負うことになる。本書は、内紛と騒擾の果てに勃発した近代最大の内乱・西南戦争に至る経緯を辿り、近代日本の原点を再検証する。
目次
第1章 なぜ徳川幕府270年の体制は亡びたか
第2章 権力闘争中の内乱と体制改革
第3章 王政復古と武力討幕
第4章 戊辰戦争と廃藩置県
第5章 国内改革と対外路線―明治六年政変
第6章 士族の反乱と自由民権
第7章 西南戦争とその政治・経済的帰結
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
13
祖父の兄弟の伝記から維新史にのめりこんだ著者(歴史学者ではない)による維新史。小説を典拠とする部分が多く、学術的なものではない。ただ、徳富蘇峰の『近世日本国民史』の引用が最も多いのは今となっては面白いかもしれない。徳富の100巻に及ぶこの大著は現在学術的な評価は低いが、1917年生まれの著者や同世代の人々にとって歴史認識の軸になっているのであろう。現代の歴史学とは違った視点で見た明治、という意味で興味深い。2025/01/31
印度 洋一郎
5
小島慶三の講演を新書に起こしたもの。テーマは、権力闘争としての幕末維新であり、明治維新には批判的な論調。元勲達の日記などを中心に、維新の指導者達が互いに隙あらば、相手を潰そうとしていたことや、「あいつは嫌いだ」という赤裸々な嫌悪感が紹介されている。只、権力闘争という視点を導入すると、わかりにくいこの時代が、意外にもはっきり見えてくるのも確か。逆説的に言うと、わかりにくいのはえげつない部分にオブラートをかけて、「素晴らしい明治維新」というイメージを守ろうとしているからだと気づかされる。そういうことなんだね。2014/04/26
TMHR ODR
3
祖父兄弟が官軍と賊軍に別れたという著者だけあって、とてもニュートラルな立場からの幕末明治維新の概略。講演を本にしただけあってとても読みやすく、この時代を知りたい初心者におすすめ。2015/07/22
中島直人
2
この時代の人間関係のつながりが良く理解できる。ただ、西郷隆盛以外については、余りにも各人の権力闘争に原因を帰結させ過ぎ『夢』が無い。維新の偉人達にロマンを感じてきた向きには、幻滅すること間違い無しであり、お薦め出来ないかと。2012/01/13
伊藤チコ@革命的cinema同盟
1
司馬遼太郎が好きな人が読んだらどうおもうだろうと考えてしまう。うんや、明治維新の通史として非常に面白く読めたんだけど、幕府よりの視点からなので興味深い。美談・栄光として語られがちな明治維新だけど、内部はドロドロの権力闘争で、薩長、長州藩内部で当初の志が完全になくなってしまったのがわかる。本作を期に士族の一連の反乱の意味と意義が理解できた。2020/04/26