内容説明
天下第一の奇書といわれる『金瓶梅』は、中国でたびたび発禁の憂き目を見ながら、四百年間読み続けられてきた。描く世界は主人公西門慶の家庭内の出来事を中心にした「飲食男女」すなわち日常生活であるが、その裏に人の心の深い闇を覗かせる凄味に満ちた作品である。本書は西門慶の人物像と、それぞれ個性豊かに描かれる彼を巡る女性たちの魅力を探り、明代に現れた型破りの小説への一つの「読み」を呈示し、奇書たる由縁を追求する。
目次
第1章 『金瓶梅』の描写の特殊性
第2章 『水滸伝』と『金瓶梅』
第3章 『金瓶梅』の女性たち
第4章 西門慶
第5章 応伯爵
第6章 お父様と呼ぶ女たち
第7章 従来の『金瓶梅』研究について
第8章 現代の『金瓶梅』
第9章 終わりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぎへん
5
「おれだけが知っているんだ。お前には分からん」//中国の四大奇書の一つ『金瓶梅』の入門書。『金瓶梅』はこの上なく精巧なオナニー小説。読んでもらうことを想定していないかのように、退屈な日常生活の描写を緻密に繰り返す。読者を飽きさせる。わかる人にだけわかる伏線を敷く。作者にしか分からないような謎を含ませるナルシシズムは通常なら唾棄すべきものだが、これだけ手に余るものだと畏敬の念に変わってしまう。手強い、怖ろしい。いつか読もうという気になれるだろうか…。2016/02/17
りんご
1
金瓶梅を読む前に解説書として読んだ。なかなかたいへんそうだなぁ。。。2024/12/06
そーうん
0
実はむかし、日下先生の初級中国語を受講したことがあるが、この本を読めば読者はまみえずして先生のパワフルさを知りうるだろう。緻密な読解に支えられながらの一刀両断ぶりを楽しめばよい。刊行されつつある田中智行『完訳金瓶梅』とあわせてどうぞ。2019/01/22
じろう
0
予想外に面白かった。著者が女性のせいか、潘金蓮やその他の女性に対する描写は男性には書けないほど残酷で辛辣であった。残念なのはこれまた女性著者であるので金瓶梅のポルノグラフィックの面での記述がほとんどなかったこと、いやむしろ批判してます。山上たつひこの漫画にも言及していて鋭いという指摘をしてます。私はこの漫画で孫雪娥ちゃんが一番好きだったのですが可愛そうな運命をたどったと知って涙する。2018/05/03