目次
プロローグ 中欧を求めて
第1章 戦後ヨーロッパ秩序の模索―緩衝国家群の政治力学
第2章 ヒトラーとスターリンの間で
第3章 対立の予兆
第4章 チャーチルとスターリンの間で
第5章 分裂と依存
第6章 ローズヴェルトとスターリンの間で
第7章 モスクワ一九四三―中欧国家連合構想の破綻
第8章 ヨーロッパの分断と「東欧」
エピローグ 「東欧」から「中欧」へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紙狸
17
1994年刊行の新書。副題が「大国の思惑、小国の構想」。「小国」とはポーランドとチェコスロバキア。両国については、第1次大戦の結果誕生した国民国家、という知識はあったが、この本を読んで学ぶことが多かった。ポーランドは独立直後からソ連に軍を進め、リトアニアの現ビリニュスから西ウクライナまでの領土を確保した。第2次世界大戦中は、ポーランドの亡命政権、チェコスロバキアの亡命政治家は、戦争後の地域秩序の構想を抱いて奔走する。だが、現実にはソ連、米国、英国という3大国間の力関係や交渉でものごとは決まっていった。2023/04/14
coolflat
11
いかに米ソ冷戦構造が形成されたのか。“中欧”諸国と米英ソ三大国の動きを通じてその過程がありありと分かる。“中欧”がいかにして“東欧”へと変容したのか。第二次大戦中(1939年、本格的には1942年)から始まる中欧諸国の連合国家構想が、いかに米ソによって破壊されたのか。中欧諸国に理解を示した英国の構想がいかに破綻したのか。ここから分かる事はそれまで巨大であった英国の弱体化とそれとは相対的に強大化する米ソ二大国のありようである。因みに本書で言う“中欧”とは、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーを指す。2015/09/24
ジュンジュン
9
西にドイツ、東にソ連に挟まれた中欧(本書ではポーランドとチェコを中心に)の運命が決する過程を描く。本書の主旨は、ポーランドとチェコの挑戦(国家連合)は、両国の協調と対立を経て、三大国(英米ソ)の思惑の前にあえなく挫折したとする。最終的に、1943年のモスクワ外相会談とテヘラン首脳会談によって。2021/08/01
印度 洋一郎
3
ポーランドとチェコスロバキアに注目し、ドイツとソ連という二大勢力の狭間に生き残ろうとした小国のサバイバル戦略が潰えた1943年に焦点を定め、そこまでの経緯を分析。小国同士が生き残るために国家連合を目指した両国も、それぞれの思惑の違い(反ソで中世の大国復活を望むポーランドと、親ソで小国として生き残ることを望むチェコスロバキア)があった。そして国家連合を潰して勢力圏にしたいソ連、それに反対して影響力を残したいイギリス、戦後の世界秩序のためにソ連に融和的なアメリカという複雑怪奇な情勢が、小国の思惑を押し潰した2015/08/19
ラム
2
25年前の著作 ソ連崩壊で欧州情勢は大きく変動したが、ロシアの侵略行為、米国との駆引き等まさしく歴史は繰返す 中欧の概念が如何に成立したか 東西両陣営による欧州分断の起源 中欧の第二次大戦の戦後処理を巡る英米ソの駆引きで、当事国の思惑が大きく逸脱していく過程を丹念に追う 特にポーランドとチェコスロヴァキアの亡命政府間の合意が大国の思惑から崩されていく様や、対独戦で孤軍奮闘したソ連への米英の負い目と、外交交渉に長けたソ連に翻弄され、結果フリーハンドを与えてしまう そして冷戦へ 小国の動向に着目した戦後欧州史2018/08/15