内容説明
今から300年前、ロシアではピョートルという強烈な個性をもつツァーリが、国家と社会の「改造」を断行した。それは20年に及ぶ大北方戦争の交戦国スウェーデンを手本に、ロシアの「西欧化」を目指すもので、改革の射程は軍事、行財政、商工業から信仰・文化にまで及んだ。新首都サンクト・ペテルブルグ建設は改革を象徴する事業であった。本書は近代世界史の一翼を形成するピョートル改革の内容と成果、その影響をつぶさに検証する。
目次
第1章 遺産
第2章 改革への道
第3章 大北方戦争
第4章 軍隊と財政
第5章 行政―中央と地方
第6章 貴族と農民
第7章 工業、商業、サンクト・ペテルブルグ
第8章 教会と世俗文化
第9章 ピョートル大帝―人とその周辺
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
俊
27
ロシアの皇帝ピョートルが国家と社会に対して行った数々の改造(ペレストロイカ)と、その及ぼした影響を解説した新書。国内では、教会権力を弱め絶対君主制を確立し、軍制・官僚制・税制などの改革も進め近代国家の基を築いた。ただ、その改革はあまりに急進的だったので、民衆の大きな反発も呼んでしまった。一方国外では、大北方戦争でスェーデンに勝利しロシアの国威を大いに高めた。ピョートルの改革の考察が要旨なので、人間としてのピョートルの叙述は少ない。それにも関わらず、彼の強烈な個性の強さが感じられた。 2014/12/19
崩紫サロメ
20
ピョートル大帝の生涯とその改革についてバランスよく扱われた評伝。人頭税の導入が有名であるがそれはの農奴制の確立と領主の農民支配の強化、村の連帯責任制の確立と関連して捉えるべきという指摘(p.121)、また大帝はロシアにギルドやツンフトなどの新しい制度を持ち込もうとしたが、西欧では繁栄こそが都市の自治的諸機関を育てたのであり、その逆ではなかった(p.143)などなかなか興味深い指摘が多かった。2021/01/20
こぽぞう☆
17
エカテリーナ二世が好きで、何種か評伝や漫画を読んだことがある。彼女が理想としたのがピョートル大帝。ピョートル大帝についてトロワイヤの評伝があるが、トロワイヤに凝ってた(30年くらい前?)に読んだかどうか忘れた。で、この本はピョートルの人生ではなく事績を書いた本。時系列とは限らず、章ごとにテーマが変わり、年代が前後するのは読みにくかったが、エカテリーナ二世の前史として楽しく読んだ。2019/02/08
Tomoichi
16
17世紀のロシアを西洋化改革するツァーリ、ピュートル大帝の生涯とその改革内容を戦争・軍隊・財政・行政・貴族と農民・商工業・新都さん・ペテルブルクそして教会と全方位に考察する。私たちがイメージする大国ロシアの原型を作った皇帝の物語。やっぱり中国同様広い国ってスケールが違う(笑)それは読んでのお楽しみ。2018/10/31
Toska
13
再読。主人公は面白エピソードに事欠かない人物だが、おそらくは意識的にそれらを封印し(有名な抜歯のエピソードすら出てこない)、彼が実施した改革を丁寧に検証していく至って真面目な一冊。前時代のロシアから積み残された課題と、重商主義という同時代の潮流が縦横の軸として明示され、読んでいて分かりやすい。抑制的な語り口が、却ってピョートルのとんでもなさを浮き彫りにしている。2023/11/22
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