内容説明
明治4年の新貨条例の公布によって、円は近代日本の通貨として公式の誕生をみた。しかし円には遡ること約30年の前史があり、また実質的に貨幣名・基本単位名に決まった明治2年から公布までの間、制度・質量・金本位制などを巡る紆余曲折があった。それから百余年、内外の激しい波浪のなかで一進一退を繰り返しつつ、円は今日の経済大国日本の代名詞に成長した。円の歴史に近代日本の軌跡を読み解き、その行く末をも考える。
目次
ロンドンの2円半金貨
円前史
円の出生
金本位制度
貨幣マークを訓む
保証準備屈伸制限制度
最高発行額屈伸制限制度
こしかた、ゆくすえ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
3
明治以来の日本の通貨「円」はいかに生まれたのか?実は明治以前の江戸時代、既に通貨を表す漢文由来のスラングの一種として使われ、幕末には若い知識層にはなじみのある言葉だった、という。その流れの中で、円が新しい通貨単位として制定。英語表記の「YEN」も中国由来の発音の方が国際(特に日本の主な市場となるアジア)的に通用し易かったので、日本語の発音よりも優先される形で定着。この他、ローマの度量衡単位に由来する英ポンド、国際貿易通貨メキシコ・ダラーと区別するために生まれた米ドルもそれぞれの由来を解説している。 2020/09/01
ぜっとん
1
円という貨幣を中心に辿るの経済史。口調はいやみだが内容はわかりやすいし、それなりに濃い……と思う。最後の、パックス・ブリタニカの構造とパックス・アメリカーナの構造の比較は、概念化されていたため細部は無しとはいえ、大枠の捉え方としては非常にナルホドと思った。その部分だけミニ要約(イギリス式では、植民地を前提として国際均衡を視野に、貿易赤字を経常収支の黒字で埋めつつ世界に金を還元する。アメリカ式は、貿易黒字を利用して金を独占したが、この金は朝鮮戦争やベトナム戦で還元された。2012/12/06
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