内容説明
ビデオ・半導体の世界的シェアの独占から、日本の技術覇権を云々する説は多いが、はたして本当か。東芝ココム事件のような国家安全保障と結びつく国家技術摩擦は、どんな世界秩序の枠組で捉えたらよいのか。一昔前の武力・領土的発想や、最近の通商国家論の如き経済視点ではなく、本書は「国家は技術によってヘゲモニーをかち取り、技術によって失う」という観点から大国の興亡を読み直し、日本の今後の進むべき方向を示唆する。
目次
序章 170年前のココム事件
第1部 パックス・ブリタニカ(帝国への助走;産業革命の必然と偶然;気がついてみたらヘゲモン)
第2部 技術のゲオポリティーク(分断国家ドイツの原点;技術覇権主義の台頭)
第3部 アメリカ・バイ・デザイン(アメリカはどういう国か;アメリカン・システム)
第4部 日米摩擦の構図(矢は折れたか;鬼っ子日本と日米摩擦)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
羊山羊
12
科学技術はいかに国家の発展と共にあったのかを、ルネサンス期から近現代の欧米諸国、特に英国、ドイツ、米国を例にとり探求する。流石に1989年刊だけあって古さは否めない。グローバルヒストリーどこ吹く風である。しかし、本著内の学際的な内容と着眼点は要注目。本著中では、複製技術とその拡散に対するオリジナル技術を持つ国家との戦いに的を絞る。読めば面白いのが、技術と法やルール整備の終わりなき戦いの凄まじさだ。一度広まり、自国より高品質なものを他国が作り出すと自国の優位性は崩れてしまう。→2024/03/11
KOBAYASHI
1
◎。1989年の本、再読。昔は、英国、ドイツ、米国、日本も新興国。技術は国家の安全保障を脅かす。2023/01/09
Tetsuya Noguchi
0
副題に「国は技術で興り、滅びる」とある通り、国際政治を技術という側面からみた興味深い書。何故、ある国は国際政治で台頭し、他の国はできないのか、という疑問が研究の土台にあったとのこと。その謎を紐解く一つの鍵が「エミュレーション」。他国から技術を真似るのだが、単に真似るだけでなく、そこに独自の進化を加えていくというもの。 過去、英国、ドイツ、アメリカなどの国々もみな、その点で共通しているとのこと。1989年に書かれた本ではあるが、今日的にも十分に面白い。2019/05/27