内容説明
武力による所領争奪の時代が終焉し、限られた領地で効率よい収益を求めざるを得ない徳川幕藩体制下に入ると、出版文化の隆盛にのって、農村振興を目的とした栽培技術の解説を中心とする農書が数多く刊行された。本書は、宮崎安貞、貝原益軒、大蔵永常らによって科学と呼ぶに価する方法で執筆され、個別的経験と風土の制約を大きく受けていた江戸時代の農業を、飛躍的に発展させた農書の変遷と、その文化史的意義を考える。
目次
1 農書の誕生(土居清良と『清良記』;現代と共通する問題)
2 農書の発達(農村の困窮;佐瀬与次右衛門と『会津農書』)
3 農書の出版(経験から科学へ;宮崎安貞、挫折の人生)
4 農書の増加(百科全書的な農書;大蔵永常の農書)