出版社内容情報
老舗・桜山ホテルで、憧れのアフタヌーンティーチームで働く涼音。
甘いお菓子を扱う職場の苦い現実にヘコみながらも、自分なりの「最高のアフタヌーンティー」企画を作り上げることができた。
そして、最初は対立していたシェフ・パティシエの達也との距離も変化していく。
――そこから3年、涼音に大きな変化がおとずれ……。
内容説明
「二人で最高のパティスリーを作りたい」パティシエの達也と夢を共有し、共に生きることを決めた涼音。店舗開業の目処もつき、いざ婚姻届を出そうとした時、あることに気付いた。どうして自分は当たり前のように、「夫の氏」を選ぼうとしたのか?ここにチェックをつけたら、“遠山涼音”は、どこへいってしまうのだろう。夫婦別姓、結婚=幸せへの疑問…。『最高のアフタヌーンティーの作り方』に続く、涼音の成長の軌跡。
著者等紹介
古内一絵[フルウチカズエ]
東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。2017年『フラダン』で第六回JBBY賞(文学作品部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
174
選択的夫婦別姓について焦点を当て、結婚に対する様々な考え方・価値観が飛び交う中で、涼音と達也、そして周囲の人々がどんな道を選択していくか、5つの物語で描かれている。男や女という大きな主語で括られがちだが、同じ女でも様々な意見・考え方がある。それは自由であっていいし、自分の考えを他者にとやかく言われる筋合いはない。納得できる道を選択できるよう、しっかりと考え抜いて、結論を出した涼音と達也が2人で歩んでいくことを心から応援したいと思った。おいしそうなアフタヌーンティーも魅力的で満足できる一冊だった。 2024/11/11
モルク
130
「最高のアフタヌーンティー…」の続編。シェフ達也と結婚し新しい店を持つことで大好きだった桜山ホテルのラウンジを退職した凉音を中心にラウンジの面々の苦悩を描く。女だからという女性蔑視や様々なLGBT問題がたくさんつまった本作。婚姻届を書くときに夫の姓になることへの疑問を持った涼音。私は自分の旧姓が気に入ってなかったから一人っ子だったけど夫の姓にしたけどね。少し頑な過ぎる涼音に多少うんざり。ちょっと詰め込みすぎかな。続編があるなら前作のようなものがいいなあ。2025/02/06
いたろう
102
「最高のアフタヌーンティーの作り方」の続編。日本で最初にアフタヌーンティーを提供した椿山荘がモデルとなる桜山ホテルのラウンジスタッフを辞めて、桜山ホテルのシェフ・パティシエだった達也と結婚し、達也と一緒にパティスリーを作ることになった涼音。しかし涼音は、結婚して自分の名字が変わることに違和感を覚える。夫婦同姓を法律で義務づけているのは日本だけだということを初めて知った。何の疑問もなく、社会は男性が中心だと考える男たち、それを普通に受け入れている女性たち。その事実に考えさせられる。「〇〇と塩」の話に大笑い。2024/12/19
おしゃべりメガネ
102
シリーズ第2弾ですが、前作とは結構雰囲気が変わり、予想外にかなり社会派な作品でした。前作でパティシエの恋人「達也」がフランスへ渡ってから、日本に戻りめでたく二人でお店をスタートすることに。最初は何の迷いや悩みもなくすんなりと相手方の姓を名乗るコトを受け入れていた「涼音」がふとした疑問を持ち始めてから、何やら怪しげな雰囲気に。前作から登場していたキャラもしっかりと要所で登場し、それぞれの悩みに葛藤しています。それでもしがらみから吹っ切れて、これまでの自分とサヨナラする新しい姿に涙腺が緩んでしまいました。2024/12/08
ウッディ
92
老舗ホテルのラウンジ担当を辞め、パティシエの達也とともに二人の店を開く準備を始めた涼音は、婚姻届けを書く段になって、自分の姓を失うことに気付く。正直なところ、涼音の頑なさに少しうんざりしたが、「おめでとう」という言葉で、自分の違和感を包み隠しても、自分の将来に誰も責任を取ってくれないという言葉に納得。美味しそうなスイーツ以上に、セイボリーにも惹かれ、老舗ホテルで一人優雅にアフタヌーンティーを楽しむ男性の姿に憧れました。色んな事が丸く収まった結末を読むと、自分を曲げない生き方が清々しく思えました。2025/03/24