出版社内容情報
わけありの女たちを診療するおゑんの許へ、何かを極度に怖れている妊婦が訪ねてきた。彼女は目を血走らせ、十両を差し出しながら言った。「お願いします。この子を産ませてください」と――。
後日、吉原惣名主に依頼され診ることになった女郎も、奇矯な妊婦だった。大店の主人に身請けされることが決まっていて、その子を身籠っていながら、「産みたくない」と叫び自死しようとしたのだ。
彼女たちは何者で、何故、一人は出産を望み、もう一人は出産を拒否するのか? 疑念がきざしたおゑんは、遊女連続死を調べる過程で親しくなった吉原惣名主の用心棒・甲三郎とともに、また謎を追うことになったが……。
「読売新聞オンライン」人気連載、待望の書籍化。
内容説明
吉原惣名主の川口屋平左衛門に「診てもらいたい」と頼まれた遊女・桐葉は、奇妙な女だった。彼女の言動に疑念を抱いたおゑんは、廓の用心棒・甲三郎や薬草に詳しい末音らの力を借り、その謎に迫ろうとするが…。
著者等紹介
あさのあつこ[アサノアツコ]
1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。小学校講師を経て、91年に作家デビュー。『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー1~6』で小学館児童出版文化賞、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
140
なんてこったい。惚れられ惚れて身籠って・・望まれて上がりの人生を生きるはずの遊女・桐葉。まさかの来し方があったなんて。生きるとはそれだけで罪咎だと言うのか。誰かの声に煽られた力は生贄を以って、それを見ていた子どもの頃の記憶は消せない―嗚呼、苦しい。それでも刻まれた悲惨な記憶に蓋をするのではなく、生き直す力をくれるのは赤子の温もり、命の鼓動なのだ。こんな展開を用意してるなんて、流石のあさのさん。闇医者おゑんシリーズの最新刊はズシリと応える面白さだった。2024/04/10
あすなろ
104
吉原惣名主の煙管の煙揺蕩う中、おえんは守りに徹し、相手の出方を待つ人ではないと告げられる。深く関わってしまった戦ならとことん戦うご気性だと。今回もおえんの将来展望が語られながら、あの子の目の闇に向けて戦ってしまう、そんなハードボイルドな闇医者おえんシリーズの世界に浸ったのである。当然、次作にも期待。但し、設定上仕方ない感もなくはないが、そろそろ吉原の世界から脱しても良いかな、とも。2024/09/15
タイ子
88
闇医者おゑんシリーズ第4弾。謎を残したまま終盤までぐいぐい引っ張る文章の力強さとおゑんが独り言ちの胸の内が読んでいるうちにじわりじわりと胸に攻め入る。吉原の惣名主が診察を依頼した一人の遊女・桐葉。彼女は身籠っていてもうすぐ相手の大店の主の元に身請けされるという。お互いを思い合っている、幸せが目の前にあるというのに桐葉は子供を産みたくないという。何故?産みたくない理由はどこにあるのか?謎が謎を呼び、辿り着いた真実。悲惨な過去に縛られる母親を救ったのはいたいけな子供の姿。あさのワールドに今回もどっぷり。2024/05/23
itica
79
子を孕んだ遊女を預かることになったおゑん。常軌を逸した行動を取る遊女にはどんないきさつがあるのか…。またもやおゑんがやっかいごとに巻き込まれていく。大物相手でも動じないおゑんの丹力と洞察と推理は見事だが、それは後から思うことで、得体の知れない話は怖かった。こんな事にばかり首を突っ込んでいたら、命がいくつあっても足りないよ。 2024/05/07
ゆみねこ
76
闇医者おゑんシリーズ第4弾。おゑんのもとで子を産み、はかなく命を落としたお竹。その子どもを産むと言う執念は尋常ならざるものだった。吉原惣名主・川口屋平左衛門から頼まれた遊女・桐葉(お喜多)は大店の主人との間に子を授かり身請け話が進んでいるのに頑なに子を産むことを拒み、異常な言動をとる。お喜多はなぜ子を産むことを拒むのか?その来し方を探り、隠されていた悲しい真実。おゑんと吉原首代・甲三郎のこれからも気になるシリーズ。シリーズ中一番の読み応えだった。2025/01/13