出版社内容情報
戦後推理界に「社会派」の領域を拓いた巨匠による、知られざる論跡の全貌――『黒い手帖』ほか単行本・全集にはこれまで未収録だった、貴重なミステリ評論38篇(+α)を初集成。「戦前」と「戦後」、「本格派」と「社会派」の間で、彼はいかに格闘し、現在に至る歴史を創りあげたのか? ミステリ史のみならず、現代日本文学史の空白をも埋める一冊。没後三十年記念出版。解説・巽昌章
内容説明
今や推理小説は、本来の性格に還らなければならない。「社会派推理」の巨匠による、戦後ミステリ史の空白を埋める論跡の全貌。『黒い手帖』ほか単行本・全集にはこれまで未収録だったミステリ評論38篇(+α)を初集成。没後30年記念出版。
目次
1(『小説研究十六講』を読んだころ;推理小説に知性を;推理小説の独創性 ほか)
2(森〓外;仁木悦子;角田喜久雄 ほか)
3(新しい推理小説―生まれよ本格派;新本格推理小説全集に寄せて;推理小説と旅 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
109
松本清張の推理小説評論は『ミステリーの系譜』しか知らなかったが、他にもこれほど多く書いていたとは。しかも大半が単行本初収録なので、読者にはありがたい限りだ。犯罪動機を重視する社会派の創造者とされてきた清張だが、トリックや意外性を強く意識してからこそ「もっと生活を書き込まねばならない」と、袋小路に陥った本格物の復活を強く願っていたのがわかる。作品成立のヒントやアイデア、読書の愉しみや批評など数々の文章は、大作家のプライベートな面をも知れる貴重なものだ。没後30年の今日、綿密な研究に基づく評伝が読みたくなる。2022/08/29
レモングラス
96
推理小説に関する清張の文章のこれまで単行本や全集に未収録だったミステリ評論、作家論、講演、随筆、インタビューなどを収録。清張が目の前に現れてくるような、講演を聴いているような気持ちになれます。作家論では菊池寛や鴎外、いろいろ読みたくなるし、創作ノートを読むと、また清張作品を読み返したくなります。未読の作品が気になるし、読み応えありすぎてテンション上がります。好きな自作に、大好きな『点と線』『張り込み』や短篇集『影の車』や『黒い画集』の中のいくつか、「駅路』などもあって嬉しく、とにもかくにも贅沢な一冊。2022/11/17
ハスゴン
35
書かれている事は、古いし極端な事かと思いますが、その時代の視点やブレていないミステリに関する事が知れてとても興味深く、清張の作品を読みたくなりました。2023/01/03
ぐうぐう
33
没後30年記念出版となる『松本清張推理評論集』。単行本未収録のミステリ評論や対談、インタビューを初集成というのが本書の売りなのだが、清張の主張はほぼ一貫している。つまり「もっと動機を!」だ。動機を描くことが人間を描くことに繋がり、結果として社会を描くことになる。清張の作品が社会派推理と呼ばれる所以がここにある。とはいえ清張がトリックを軽視していたわけではないことは、『点と線』や『砂の器』と言った彼の代表作を見れば明らかだ。(つづく)2022/08/24
山田太郎
20
社会派の巨匠でこの人のせいで本格派が不遇になったみたいな歴史観のような気がしないでもないけど、本格もネタ切れするのは当たり前でそう考えるとそういうもんだという気がしないでもないというか。すごい大物っぷりというか大御所というか大家というか偉そうな感じがハンパないなと思った。怒らせたらこの業界から抹殺されそうというか。2023/04/08
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