出版社内容情報
「国境に高い高い壁(great great wall)を建てて、メキシコに建設費を払わせてやる」――トランプ大統領の発言で注目を集める「壁」。人はなぜ土地を分断しようとするのか? 環境は人間の思考にどのように影響するのか? 壁はどうやって作るのか? 建築史家である本書の著者は、中国、中東、北イングランドなどの「境界線」を辿りながら、壁という存在の謎に迫る。
内容説明
イェリコ、北イングランド、万里の長城、パリ、ベルリン…紀元前8000年から人類は壁をつくり、「われわれ」と「彼ら」を分けてきた。そして2016年、新顔の異色大統領候補が宣言した。「わたしよりうまく壁をつくる者はほかにいない」
目次
1 差異の発明
2 つながりをつくる国境
3 不安定な壁
4 壁の役割
5 通常状態の構築
6 壁の復活
7 すべての壁が通る道
著者等紹介
ヴォルナー,イアン[ヴォルナー,イアン] [Volner,Ian]
マンハッタンを拠点に活動する建築史家、デザイン批評家。1981年生まれ。コロンビア大学で建築史・理論の学士号、ニューヨーク大学インスティテュート・オブ・ファイン・アートで建築史・批評の修士号を取得
山田文[ヤマタフミ]
翻訳家。イギリスの大学・大学院で西洋社会政治思想を学んだのち、書籍翻訳に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
32
トランプ大統領が選挙戦で打ち出した、アメリカとメキシコの国境に設けるとした壁。万里の長城やハドリアヌスの壁、パレスチナの分離壁、ティエールの城壁、ベルリンの壁などを取り上げつつ、壁という存在の謎に迫った一冊。冒頭に世界の壁を記した地図はあるものの、構成としてはアメリカとメキシコの国境を扱う章と、世界中の壁を扱う章が交互に配置されていて、各地の取材した壁の解説を交えつつ、メキシコとの国境には壁自体は元からあり、それが政治の材料として取り上げられた意味を問う内容として読むとなかなか興味深いのかなと感じました。2020/06/07
サケ太
19
壁という物語。歴史的な“壁”たちを通して語られるその意義。壁に託された理由。どうしたって政治的なものとむずびつく現実。それは現代と変わらない。壁を支える心理的ファンタジー。『万里の長城』、『ベルリンの壁』などの著名なものから、『ティエールの城壁』といった知らなかったものまで。建立から崩壊。そして、現代に復活する壁。防衛から抑圧の象徴へ。価値観は変わる。だが、壁は歴史的に必ず必要だった訳ではない。壁のない世界が来ることを願う。「すべての壁に共通することがあります」「どれもみな衰えるということです」2020/04/17
紙狸
8
原著は2019年、日本語版は20年に出た。トランプ大統領は、メキシコとの国境に「壁」を建設することを目玉政策としている。この「トランプの壁」を世界史の中に位置づけようと試みる。「壁」の先例は、ローマ帝国のハドリアヌス帝がブリテン島でスコットランドとの境界に作ったもの、大部分が明の時代に作られた中国の「万里の長城」、東西冷戦の象徴「ベルリンの壁」、イスラエルがパレスチナ勢力との間に立てたフェンスなど。本全体を貫くメッセージがあるかどうかは別として、個々の事例を知るには役に立つ。著者は建築史が専門。2020/08/07
kinoko
1
有名な壁にまつわる歴史を、著者の訪問記と共に説明している。じっくり読むなら面白いが情報として欲しいだけの時には、余計な話が長い気がした。 それぞれの壁の話を、トランプの壁と結びつけならが展開されるので、ただの歴史読物というだけでなく、読者も見聞きしたことのある話が出てくるので興味深い内容だった。2023/01/09
takao
1
ふむ2020/12/05