出版社内容情報
きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたの――
共に生きながら、今は遠く離れてしまった「わたし」と「ぼく」。
小川洋子と堀江敏幸が仕掛ける、かつて夫婦だった男女の優しくも謎めいた悲劇とは。
内容説明
かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山市生まれ。「妊娠カレンダー」(芥川龍之介賞)、『博士の愛した数式』(読売文学賞及び本屋大賞)、『ミーナの行進』(谷崎潤一郎賞)、『ことり』(芸術選奨文部科学大臣賞)など著作多数
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。「熊の敷石」(芥川龍之介賞)、『雪沼とその周辺』(谷崎潤一郎賞)、『正弦曲線』(読売文学賞)、『その姿の消し方』(野間文芸賞)など著作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
550
小川洋子と堀江敏幸の二人による往復書簡形式のコラボレーション。かつて、辻仁成と江國香織の共作の試み『冷静と情熱のあいだ』があったが、それに比べるとぐっと地味ではあるものの、この二人だけあってさすがに奥行きは深い。最初の頃は方向が定まらず、模索気味であったが、しだいに双方が歩み寄りを見せてくる。ただ、盲目の設定(とりわけ堀江側)は、必ずしも有効に機能しているとはいいがたい。また、同じ方向を目指そうとする試みが随所で無理を生じさせてもいるだろう。最後の十四通目は、堀江が見事にこの書簡物語を収斂させた。2020/04/18
starbro
331
小川 洋子は、新作中心に読んでいる作家です。堀江 敏幸は、初読です。男女二人の芥川賞作家による往復書簡小説も初読です。タイトルから、もっとライトな恋愛小説なのかと思いきや、歴史・宇宙・自然科学等とかなり大きな広がりを持った壮大で奥が深い物語でした。2019/07/14
ウッディ
208
事情があって今は離れて暮らす男女の往復書簡。アンネの日記、ニュートリノ観測所、パブロフの犬‥自由に綴られる内容を頭で追っている間は読むのが辛かったが、美しい言葉を心で受け止めてみようと思ってからは、二人が出会い、一緒に過ごした思い出を大切にし、互いを思い遣る優しさが溢れていることが感じられた。そして別れる原因になった悲しい思い出も明らかになります。内容を思い出せない美しい夢を見た朝といった読後感でした。BGMは、ラフマニノフのピアノ協奏曲No.3 https://youtu.be/SIVeznsvlOI2019/10/13
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
182
僕には予感があった。この静かなる月あかりの湖畔で漕ぎ出したボート、何処にも行かないもう戻れない永遠に君とふたり揺蕩うというよろこびとかなしみ。君のまぶた切り取って記憶にふかく沈めたかった僕はとうとう発見されなかった蛍。君の唇が少しずつ息をすることを拒んで違う星の湖畔にひとり漕ぎ出してしまうこと裏切りのように感じてしまう僕は弱いね。せめてここから見える星であるといい月ならば尚いい新たなる旅立ちを祝福したいと口だけで言う。ことばだけがエヴァンズの切手で運ばれることをねがう春の終わりに。2020/05/06
KAZOO
165
小川さんと堀江さんのコラボによる作品です。読んでいてコラボとは思えないほどでした。往復書簡とはいうものの視力に障害がある様ながらこのような物語にしてくれて幻想的な心の内面を描いている感じです。読むのに他の本よりも時間をかけてしまいましたが終えるのがもったいないような感じでしばらくしたらまた再読してみたい気がします。宮本輝さんの「錦繍」を思い出して読みたくなりました。2019/12/30