内容説明
アーサー・コナン・ドイルは、医師から作家に転じシャーロック・ホームズを生んだ時代の寵児。ジョージ・エイダルジは、司祭館に育った生真面目な事務弁護士。活力溢れるアーサーと、実直さが取り柄のジョージ、異なる世界に生きてきた二人が出会うのは一九〇六年のこと。連続家畜殺しの罪を着せられたジョージの嘆願に応じたアーサーは、ホームズばりの観察力で潔白を直感し、真相究明に乗り出す―
著者等紹介
バーンズ,ジュリアン[バーンズ,ジュリアン] [Barnes,Julian]
1946年生まれ。2011年に『終わりの感覚』でブッカー賞受賞。ロンドン在住
真野泰[マノヤスシ]
1961年生まれ。学習院大学英語英米文化学科教授
山崎暁子[ヤマザキアキコ]
1972年生まれ。法政大学文学部英文学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
120
実在する人物二人。どこまでが史実に従っているのかは読後に敢えて調べなかった。鬼才バーンズの良心を見たように思う。アーサーとは、かのアーサー・コナン・ドイルのこと。ジョージは父親がインド系のイギリス人でハーフである。アーサーは眼医者となったが探偵小説家が本業になった。ジョージは子供の頃から目が悪い弁護士。そして、アーサーは交霊に凝る。見えているもの、見えていないものを通じて、偏見や官僚主義、国家というもの、イギリスの良心などが描かれる。本当に言いたいことは最終章にあると思った。お見事、それにつきる。2016/05/02
まさむ♪ね
47
あっぱれジュリアン・バーンズ。その筆は冴えに冴え、まるで太陽と月のように対称的なふたりの人間、ふたつの人生をものの見事に描ききる。"太陽"はあの名探偵の生みの親、作家アーサー・コナン・ドイル、"月"は事務弁護士ジョージ・エイダルジ、実話をもとに語られるふたつの歴史。太陽と月が交差するのはほんの一時、しかしその一瞬間に燃え上がる信頼と信念の炎の激しさよ。笑いあり涙ありミステリーありサスペンスありホラーあり哀愁あり家族の愛ありと、おそらくこの本にはすべてが詰まっている。そしてそのどれもが素晴らしいのだ。2016/02/26
星落秋風五丈原
33
アーサーとジョージの人生を時系列に沿って紹し、両者の違いを浮き彫りにする。祖母の死体を見ながら『途轍もない変化が生じ、あとに「物」だけが残されるとき、いったい何が起こるのか』と目に見えぬものについても考察を深めるアーサーに対して『物語を理解する能力は十全に備わっているものの、みずから創作する力はないに等しい』ジョージは目に見えるものしか信じない。しかしその事は同時に、肌の色が異なるボンベイ出身のパールシーである父や自分に向けられた見えない悪意を感じ取れないことにも繋がる。2016/04/05
はるき
32
虚構と現実の狭間をゆらゆらと回遊しながら物語は進む。中々の大作かつ外国ものなので、躊躇したんですが、文章の流れが良いので違和感なく読めました。ホームズ好きにも満足出来る作品だと思います。2017/02/09
周到&執拗
21
実話に基づくフィクション。対話場面が多いのはそのせいだろう。資料を基に三人以上の場面を創るのは難しい。冤罪事件の圧倒的な恐怖。疑う根拠さえあればよい、動機など考える必要はない、という警察本部長の人物像が強烈だ(122ページの“証明”には虚を衝かれた)。その後作家のドイルが立ち上がり、有罪判決を覆すための闘いが始まる…。作中貫かれているのは権威というものの怖さ。当てにならない文字や言葉に、警察権力が、作家の名声が、視点人物という立場が、真実味を与えてしまう。霊媒の言葉しかり。作者の語るドイル像、またしかり。2016/04/05
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- 未熟なふたりでございますが(9)