内容説明
ヌーヴォ・ロマンの先駆となった、幻の鮮烈デビュー作(初版)を初邦訳。死を抱いて生きる無限の反復を描く、哲学的ミステリーの全貌がいまここに顕われる。
著者等紹介
ブランショ,モーリス[ブランショ,モーリス][Blanchot,Maurice]
1907‐2003。フランス・ソーヌ=エ=ロワール県生まれ。ストラスブール大学卒業。1941年、『謎のトマ』で小説家としてデビュー。読者は作者が書かなかったことを読み取り、作品は作者にとってわなとなるという発想は、戦後から発展して70年代の文壇に開花したテクスト中心の文学研究や文芸批評を先取りし、とりわけミシェル・フーコーやジャック・デリダらに大きく影響を与えた。「顔のない作家」として知られ、戦時下では畏友レヴィナスの家族をかくまった
篠沢秀夫[シノザワヒデオ]
1933(昭和8)年、東京生まれ。学習院大学仏文、東京大学大学院修士課程卒、フランス政府給費留学生試験首席合格、パリ大学文学部現代文学免状。明治大学教授を経て、73年学習院大学文学部教授。現在、学習院大学名誉教授。19世紀後半から今日までのフランス文学においての表現の問題を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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井蛙
5
海で溺れるという冒頭のシーンは、ブランショが差し出す小説の世界へと入るための洗礼である。その入口にはダンテが夢想した地獄の門のように「一切の希望を捨てよ」という言葉が掲げられていることだろう。以降、トマが彷徨うことになる空間とは、とりもなおさず言葉の空間、つまり事物から〈存在〉を簒奪する非-在の座の空間であり、すなわち死の空間でもある。しかし、死というのはトマにとってむろん無限に漸近することしかできない究極の消失点であるということを忘れてはならない。なぜなら死のまさにその瞬間トマはトマでなくなり、トマは→2021/11/23
笠井康平
1
どちらかといえば、小説らしからぬ姿をした小説だということよりも、しばしば「夜」や「死」と言われる、暗くて静かなところの手触りがびっしりと書かれていることに驚かされた本でした。こちらは初版本で、だいぶ前に読んだ中篇版の内容を忘れてしまっていたから、どこかで手に入れて読もうと思います。2013/05/11
典型的なあだ名
0
正直、俺の読解力では太刀打ちできませんでした。2015/05/30
キヨム
0
読んだというより目を通したというかんじですが……。(哲学)ミステリである、という言葉にだまされた……2014/04/27