内容説明
世界は、かの国の“普通の人々”のことを、何一つ知らなかった―一〇〇人以上の脱北者に取材を重ねてきたアメリカ人記者が、北朝鮮第三の都市・清津出身の男女六人の半生を克明に再現する。各国メディアで絶讃された話題の書。２０１０年の英国ＢＢＣサミュエル・ジョンソン賞受賞。
目次
暗闇の中で手をつなぐ
いわくつきの家系
熱狂的信奉者
闇に消える
ぎこちない恋愛
神のたそがれ
ビール瓶で点滴を
アコーディオンと黒板
善人は早死にする
発明の母
さまよえるツバメたち
あでやかな乱れ
井の中の蛙
川
覚醒
売られた花嫁
目を開き、口を閉ざせ
約束の地
母国の異邦人
さまざまな再会
著者等紹介
デミック，バーバラ［デミック，バーバラ］［Ｄｅｍｉｃｋ，Ｂａｒｂａｒａ］
ロサンゼルス・タイムズ北京支局長。その北朝鮮報道に対して、米外国人記者クラブの人権報道賞のほか、アジア・ソサエティー、米国外交アカデミーから賞を与えられる。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争下のサラエヴォからの報道は、ジョージ・ポルク賞とロバート・Ｆ・ケネディ賞を受賞し、ピューリッツァー賞国際報道部門の最終候補ともなった。『密閉国家に生きる―私たちが愛して憎んだ北朝鮮』で２０１０年の英国ＢＢＣサミュエル・ジョンソン賞を受賞
園部哲［ソノベサトシ］
一橋大学法学部卒。商社勤務の後、翻訳業に就く（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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竹園和明
29
北朝鮮第3の都市・清津からの亡命者6人にインタビューしたアメリカ人ジャーナリストのルポ。この分厚い本の詳細をここに記す事は不可能だが、人権もクソもない人民の暮らしぶりはどん底より酷い。特に90年代の食料不足で餓死者が続出し、劣悪な衛生環境が輪をかけて広まって行く様子は想像を絶する惨劇だ。何の希望もなくその日の食料確保に窮する人々の毎日。豊かさをアピールするため平壌だけ着飾る事に一体何の意味があるのか。いずれこの再生不能国家は崩壊するだろうが、“人民もろとも”では彼らは浮かばれない。2018/02/03
まど
22
読後はつらいことがことがあっても「北朝鮮の市井の人たちを思えばなんでもない」って思えるほど、北朝鮮の想像以上に過酷な日々にびっくりした。これはひどい。つらすぎる。2012/05/25
DEE
18
頭と金と勇気と運を総動員して北朝鮮から脱出した6人。著者は彼らの話を元に、裏付けを取れるものは可能な限り取りながら、北朝鮮という国のリアルを描き出す。 国としての体をなしていないにも関わらず、国として存続していることの不思議を感じずにはいられない。金一家を支えるため、一体どれだけの国民が飢え死にし、これこらも搾取され続けるのだろうか。 緊張感溢れる脱北のシーン、慣れない環境での苦労、そして北朝鮮に残してきた親族の安否の不安と彼らへの消えない後ろめたさ。色々なドラマが凝縮された一冊。2021/01/10
たす
7
清津という北朝鮮第三の都市に生きた人々の半生を追う。脱北者へのインタビューが元になっているが、小説を読んでいるよう。当たり前だけれど、北朝鮮の人も恋をしたり将来に悩んだり、子どもと自分の性格の違いに頭を悩ませたり、職場での正義に声を上げたり、と我々と変わらない人間。但しそこに体制による統治や食糧難が襲うことでやはり北朝鮮の異質さが際立つ。暗闇に紛れてデートをしていた成分（社会的階級）の違う2人の学生時代から別々の脱北、そして脱北後の再会まで、歩んだ人生が特に印象深い。2021/10/27
浦井
6
北朝鮮で三番目に大きい東北部の都市・清津出身の脱北者六名のインタビューをまとめたもの。一般市民がどのように生きているのかが、彼らの人生を通して見えてくる。生まれてから死ぬまで教育・文化・仕事を通して常に洗脳され続ける。異様さに気付いても、密告や家族全員への処罰を恐れて何もできない。配給や給料が途絶え闇市に頼るしかなくなり、社会主義を忠実に守る人ほど餓死していくという皮肉。生き残った人も健康とは程遠く、身内の死に苦しんでいる。2015/10/07
