出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
近代批評の創始者サント・ブーヴの劇烈人物評論「我が毒」の完全翻訳。19世紀フランスの文学・思想界から政界・社交界までを、慧眼が射る、至言が斬る。他に「事変と文学」等、昭和14年37歳の22篇。
内容説明
先輩、同輩、女友達―。言わせてもらおう手本はこれだ、サント・ブーヴの「我が毒」だ。“批評の父”の、人物批評―。その翻訳を新字体、新かなづかいで、読む面白さ。
目次
翻訳/我が毒(サント・ブウヴ著)
「我が毒」について
新放送会館―テレヴィジョンを見る
慶州
事変と文学
「文学界」編輯後記―「ドストエフスキイの生活」のこと
自我と方法と懐疑
疑惑2
疑問
外交と予言〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MatsumotoShuji
0
030927
M66
0
やーやーやーやー超かっこいい!最初、小林秀雄ご本人の著作かと思って、我が毒、って最高のタイトルだなおい、と思って借りてきたのですが、違った。彼が翻訳したのですね。どっちにしても、1ページだけ読んで超びびってパタンと閉じて取り急ぎねぐらへ持ち帰って恐る恐るふたたび開く感じの痺れる内容。最初から最後まで痺れる。そして私は原文を読んだわけでも、読めるわけでもないけど、翻訳が超絶素晴らしいんだなぁ。文章どうこうっていうより、もはや一体となった魂でリライトってレベル。我が毒。我が毒。我が毒。何度も呟いてしまうわ。2013/02/17
devour
0
小林秀雄がサント・ブウヴに強く影響を受けていたことがよくわかる。「大部分の人々の才能というものは一つの欠陥となって終わるものだ。齢をとればとる程、この欠陥は、言わば自らの所存を明らかにし、眼に立ってくる。」2010/06/07
0
再読。『我が毒』の翻訳は正直どうでもいい。問題は、戦時下における小林の動向だろう。例えば、戦時下における抽象的な言葉の氾濫、それは、本来は複雑なものを単純化してしまうイデオロギーのメカニズムに対して、むしろ、その複雑な手触りの中に敢えて留まること、複雑怪奇な事態を複雑怪奇なままに観察すること、と語る。ただ、これはほとんど諦念に似た気持ちから言っているのではないかとも思う。このような問いは無視されたまま戦争は激化してゆく。無力だ。「黙って事変に処した」や「反省なぞしない」という言葉は嘘偽りではない。2023/08/16