内容説明
編成はジャンル別にせずに安部公房の創造の軌跡が明らかになる編年体。本巻には、1970年2月‐1973年3月分を収録。
目次
人間の価値(講演)
一寸後は闇(エッセイ)
作品で予言したチェコ事件―堤清二(対談)
清水邦夫著『狂人なおもて往生をとぐ』(書評)
無題(エッセイ)
ドナルド・キーン宛書簡第10信(書簡)
伝統と反逆 ジョン・ネーサン(対談)
仮題「恋の法則」プロット試案(シノプシス)
パップ・ラップ・ヘップ―愛の法則(シナリオ)
リズムの世界(エッセイ)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
25
自分が生まれた頃の作品に注目したい。講演録「人間の価値—自分自身の問いから自分自身の答へ」で、人間には何を要求されるかといったら、解答能力ではなくて問題提起の能力です(18頁下段)。今も色褪せないどころか、益々重要な能力であることに驚かされる(70年2月10日)。人間というものは、新しい血、古い今までの関係でない、それは拒否していいのです(22頁下段~)。人間関係の難しさを当時も感じておられたのだろう。2021/04/05
mstr_kk
7
安部公房についての演劇ワークショップで、「安部システム」を復元して試してみるというプログラムを担当するため、再読しました。この巻は「安部システム」の演劇理論がメインになる巻といって良いでしょう。「新劇のあり方(特に演技)への不満」と、「ひとりの芸術家として、文学に還元されない新しいタイプの演劇を作りたい」という気持ちから、「安部公房スタジオ」という劇団および「安部システム」という方法を作るに至った安部。その意欲とエネルギーはすごいと思います。そしてやはりとことん頭脳明晰です。2015/01/19
roughfractus02
2
帰属と暴力/大阪万博で国家や民族別のパビリオンに人々が繰り出す光景に、彼は人々の土地への愛着が国家の法に触れない程度で滞留し、あるきっかけで暴力的に噴出する光景を二重写しする。島を愛する人々が殺人を繰り返す「未必の故意」が上演され、帰属批判を展開する『箱男』の予告が書かれ、同じテーマの講演も行われた。コードを決めてプログラムはその場で変更可能な偶然劇「ガイドブック」が上演され、物語への帰属が強い俳優たちへの異化の教育が始まる。彼の異化へのこだわりは演劇の改変に向かうが、非同期のテーマへはまだ踏み込めない。2017/02/19
むん
1
高校の現国教科書で読んだ「空飛ぶ男」が載っている。「飛ぶ男」の文庫版を出す時は、この「空飛ぶ男」も巻末に掲載してほしいのは僕だけだろうか。2012/10/20