内容説明
人間の執念の戦慄を描く怪異小説『雨月物語』、人の運命の不可思議を問う『春雨物語』、俳諧・国学・和歌と、多才に生きた浪華の「浮浪子」秋成の文学と生涯。
目次
雨月と春雨の間
上田秋成(浪華の「浮浪子」の青春―孤児と畸人;和訳太郎の世界―諸道聴耳世間狙・世間妾形気;雨月物語;国風の文人―国学・和歌和文・煎茶;京の生活―妻の死・失明と「命禄」;春雨物語;「狂蕩」の晩年―胆大小心録)
上田秋成年譜
感想・レビュー
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太陽
1
本書中で池澤夏樹氏は秋成について、「彼にとって大事なのは何よりもその時々の自分の思いに忠実にあること」と評す。秋成作品に垣間見える「直き心」「直し」という言葉が、そのまま秋成の生き様とも思い、秋成作品に没頭した自分自身の過去をも思い起こせた。高名な秋成研究者である長島弘明氏は、「ことばの魔力に、秋成は自覚的であった」と評す。「言霊」という考え方を大切にしたいと改めて思い至った。最後に『雨月物語』「青頭巾」中で秋成がとりあげた証道歌が鮮烈に記憶に刻まれる。「紅月照松風吹 永夜清宵何所為」・・・深すぎる。2017/07/25