内容説明
大本営参謀たちにとって、敗戦は「戦いの終わり」を意味しなかった。彼らは戦後すぐに情報・工作の私的機関を設立し、インテリジェンス戦争に乗り出したのである。国防軍の再興を試みた者、マッカーサーの指示で「義勇軍」を作った者、そして吉田茂暗殺を企てた者…。五人の誇り高き帝国軍人は何を成し遂げようとしたのか。驚愕の事実がCIAファイルには記録されていた。機密文書から読み解く昭和裏面史。
目次
第1章 戦後の「軍閥」と「地下政府」
第2章 国防軍を夢見た男―河辺虎四郎ファイル
第3章 マッカーサーの「義勇軍」を率いた男―有末精三ファイル
第4章 吉田茂暗殺計画の首謀者にされた男―服部卓四郎ファイル
第5章 変節しなかったトリプル・エージェント―辰巳栄一ファイル
第6章 第三次世界大戦アメリカ必敗論を説いた男―辻政信ファイル
著者等紹介
有馬哲夫[アリマテツオ]
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。93年ミズーリ大学客員教授。現在、早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(メディア論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さすらいの雑魚
32
8月15日で終わらない戦いがある。高潔な才子、憂国の志士、権力に憑かれた能面居士、軽薄無責任男、正体不明な鵺、等が焦土に蠢き離合集散する闇の水滸伝とでも言えば良いのか?軍の再建と帝国再興にむけて各々が暗躍しつつGHQから日本の地下政府と名指しされる組織に結集したり分裂したりしながらも、国境を越えた非正規戦や国内での非合法活動に挺身するさまは伝奇小説を読んでる感じでに不健全に燃える。教科書に載らないもうひとつの戦後史。本書を彩る癖強め面々は戦前から軍人の枠を越えた活躍してた札付きで、その辺が味わい深いぞ😅
軍縮地球市民shinshin
16
戦時中は大本営にいたのにも関わらず、戦後はGHQに協力するなどして戦争犯罪の訴追を免れた参謀たちがどのように協力したのか、公開されたCIA文書を元にして書かれた本。戦後、旧軍人たちは地下に潜り諜報機関を設立したがそれにGHQが接触し協力・援助体制を築き、かなりの資金が提供されていたという。日本再軍備や中国国民党の軍事援助などに「暗躍」したという。旧軍人は完全にGHQの走狗に成り下がったわけではなく、服部卓四郎や辻政信のように、対米従属を廃し武装中立を目指すために日本国防軍再建を目指していたので、情報提供も2019/10/06
中年サラリーマン
15
終戦から朝鮮騒乱・自衛隊発足へと混乱していた日本。その混乱期に大本営で働いていた参謀たちがひそかに走り回っていた。この辺の時代は僕はあまりしらなかったので楽しく読めた。大本営参謀たちはある意味インテリジェンスに関しては戦前から戦後へとたすきを渡した人たちなのかもね。2014/10/20
calaf
11
日本史の学習は中学が最後という私には、当然初めて聞くはなしばかりでした。で、大半は私の生まれる前に鬼籍に入ってしまっていたものの、辰巳氏と有末氏は最近まで生きていたのですねぇ...それにしても、国にはいろいろ裏事情があるなぁ...そしてそれを(もちろん年月が経ってからですが)公開するアメリカという国もすごい気がする...日本は、一応法律は出来ているみたいだけど、どうなんだろう...2013/01/26
しんたろう
7
大本営参謀として戦前の日本の諜報と戦略を担っていた旧日本軍の高級幹部達が戦後、共産主義との新たな対立に直面した米国と同床異夢の協力の元、独立後の再軍備に向けての裏工作や中ソ左翼への諜報行為を行った事実を米国の公開公文書の分析を通じて明らかにした裏の日本史。旧軍部の亡霊たちの復権工作なのか、新たな国家戦略の為の献身的な活動なのか、公開公文書からは事実を伝えるのみで旧大本営参謀たちの志は謎のままだ。2014/01/21