内容説明
毎年一二〇万人の観光客が訪れる長野県小布施町。この小さなまちの何に、人々は惹きつけられるのか―。そのヒントは、「修景」というまちづくりの手法にあった。伝統的な町並みに固執しすぎない。とはいえ、まちの歴史をまったく無視した再開発でもない。いまあるもの、そこに暮らす人々の思いを大切にしながら、少しずつ景観を修復して、まちをつくってゆく。奇跡ともいわれる小布施流まちづくりを内側から描き出す。
目次
第1章 北斎に愛された小さなまち(ヨーロッパのような印象深い景観;五感で楽しめる凝縮した集落;人口の一〇〇倍の観光客が訪れるまち ほか)
第2章 過去を活かし、過去にしばられない暮らしづくり―修景(伝統的町並み保存との根本的な違い;そこに住み、働く人たちが主役;当事者すべての希望をかなえること ほか)
第3章 世代を超えて、どうつなぐか(信頼関係の成熟が「内」を「外」に変える;世代交代でゆらぐ、まちづくりのイメージ;古い商店街が空洞化するメカニズム ほか)
著者等紹介
川向正人[カワムカイマサト]
1950(昭和25)年香川県生まれ。現代建築都市研究者。東京理科大学理工学部建築学科教授。74年東京大学建築学科卒業。ウィーン大学・ウィーン工科大学留学を経て、81年東京大学大学院博士課程修了。2005年から東京理科大学・小布施町まちづくり研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うりぼう
48
小布施といえば、栗鹿の子。和菓子のイメージだけでしたが、まちづくりでも優等生。「修景」という言葉を初めて知る。長浜や犬山の景観保存とは、少し違った趣。単に古いものを残すのではなく、生活を優先した町並み。自分達が住みたくなる町を作ったときに、呼ばなくても人は訪れ、リピーターとなる。心地良さは、誰にも同じ。でも、人の集まるとこに商売があり、生活と切り離された土産物屋が生まれ、さらに「修景」を考える。連続した住民の営みの中に暮らす者の不文法ができる。内山節先生の「作法」である。それをどう次の世代に受け継ぐか。2010/04/15
アキ
34
先週末、小布施の北斎館を訪れた。この小さな村にたくさんの観光客があふれ、おしゃれなカフェと古い町並みが残されていて驚いた。そしてこのまちが住民たちとともに伝統的町並みの「保存」という方法ではなく、古いものを残し、地元の住空間を活かしつつ「修景」という手法で街造りをしていることを知った。「栗の小径」と歩道の栗の木レンガも踏むと心地いい。小布施堂の元社長である市村郁夫と建築家・宮本忠長の1969年からの取り組みが現在まで引き継がれていることを本書で知る。日本の街づくりがこんな風に広がっていけばいいなと思った。2018/10/22
calaf
17
小布施・・・何かの本(小説?)で読んで、そんなところがあるんだという事は知っていたけれど、ここまですごい(?)ところとは思っていませんでした。修景というまちづくり手法を続けているところらしい・・・一般的な説明は何度聞いても(読んでも)分からなかったのですが、具体的な内容を見ると、なるほどという感じ。結構面白そうな町です。でも、行くにはちょっと遠いかな・・・2014/10/17
まさ
11
まちづくりについて考えているときに、以前訪ねたことがある小布施を題材として書かれている本書を見つけ読みました。修景という手法が興味深い。この取り組みにもキーパーソンがいるわけだけど、地元を顧みてそれらが強力ではない場合あるいは育んでいかなければならない場合などなど、地域にあった取り組みも見つけ参考にしていかなければならないと感じます。2019/01/31
たくのみ
11
私の住む街でも景観条例で古い蔵や古民家を保存している。しかし、どうにも街並みから浮いてしまいミスマッチなのだ。この本で、並みとしての保全の大切さ、軒をそろえることの意義、住民のかかわり方、市長の決意、小布施の美しい景観のコツが少しわかった気がする。様々な要素で重層的に形成された成功例・小布施。「奇跡」というより「軌跡」を参考にできたらと思う。2013/11/30