出版社内容情報
潜伏ユダヤ人とドイツ市民の〈知られざる共闘〉を描く。ナチスが1943年6月に「ユダヤ人一掃」を宣言した時点で、ドイツ国内に取り残されたユダヤ人はおよそ1万人。収容所送りを逃れて潜伏した彼らのうち、約半数の5000人が生きて終戦を迎えられたのはなぜか。反ナチ抵抗組織だけでなく、娼婦や農場主といった無名のドイツ市民による救援活動の驚くべき実態を描き出す。
内容説明
潜伏ユダヤ人とドイツ市民の“知られざる共闘”を描く。ナチスが1943年6月に「ユダヤ人一掃」を宣言した時点で、ドイツ国内に取り残されたユダヤ人はおよそ1万人。収容所送りを逃れて潜伏した彼らのうち、約半数の5000人が生きて終戦を迎えられたのはなぜか。反ナチ抵抗組織だけでなく、娼婦や農場主といった無名のドイツ市民による救援活動の驚くべき実態を描き出す。
目次
序章
第1章 出会い 1933‐1943
第2章 もうひとつの世界 1941‐1944 1
第3章 連帯の力 1941‐1944 2
第4章 守るべきもの 1943‐1945
終章
著者等紹介
岡典子[オカノリコ]
1965年生まれ。桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業。筑波大学大学院一貫制博士課程心身障害学研究科単位修得退学。博士(心身障害学)。福岡教育大学講師、東京学芸大学准教授などを経て、筑波大学人間系教授。専門は障害者教育史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遊々亭おさる
20
ナチスが政権を掌握し、ユダヤ人一掃が苛烈に進行する全体主義のドイツ。密告が推奨され善良な人々が友を、家族をもナチスに売り飛ばす異様な社会のなかにありながら己れの信念に準じてユダヤ人を助け匿うドイツ人たちがいた。ある者は自分の出来る範囲で、またある者は己れの命を賭けて。新潮選書というお堅い本の感想としては間違っているが冒険小説を読んだ後のような面白さと満足感。気の良いアル中のブラウン博士も良い味を出してるし、潜伏者からレジスタンスになったノイマン姉弟の冒険も読みごたえあり。時には権力に否を突き付ける覚悟を。2023/11/19
ミノムシlove
14
互いに面識のない他人同士の鎖が、見ず知らずのユダヤ人の命を救う。それは肉体のみにとどまらない。「かような時代にも自分の身を省みず寄り添ってくれる数多の人がいる。」虐げられた人々の心にとって、この事実がどれほど心強いものであったかを想像する。“善きドイツ人”ではなく、人間として正しい行いをしたひとたち。果たして自分はこのように行動できるのだろうか。非常時にこそ本当の姿が出る。※複数の人が入れ替わり立ち替わり登場するのだが、非常に読みやすい。著者の筆力も相俟って満足な読書体験だった。良書。2023/11/22
HDK
10
2023年第27回司馬遼太郎賞受賞作。軍事政権化で全体主義の極みであるドイツにおいて、ユダヤ人に対する苛烈な迫害があり、多くのユダヤ人は国外に逃亡もしくは収容所に送られ殺戮された。そんな中、潜伏と逃亡を繰り返し生き延びたユダヤ人がいた。そうしたことが可能になった背景には彼らを助けるために尽力した『沈黙の勇者たち』がいた。「人を支えるのは人である」絶望の中でも人を信じることで希望を見出すことができる。名もなき人びとの生の記録は私たちに大切なことを残してくれています。2023/12/19
kentake
6
1941年にナチスによるユダヤ人の強制連行が始まってから終戦までの間、多くのユダヤ人が強制収容所で命を落とす一方、一万人を超すユダヤ人が収容所移送を逃れるため地下に潜伏し、厳しいゲシュタポの監視の目を逃れ約半数が終戦まで生き延びた。 その背景には、多くのドイツ人救援者の活動があるが、戦中からホロコーストを知っていたという事実について公然と語ることがタブーとされてきたドイツ社会の中で、その実態は最近まであまり知られてこなかった。 本書では、これまでに蓄積された資料に基づき、その実態の一部が紹介されている。2023/08/25
てっちゃん
5
ナチス政権下でユダヤ人を救うドイツ市民のネットワークが存在していたことに、感銘を受けた。大変示唆に富む良著だと思う。2024/04/09