出版社内容情報
こんな読み方もできるのか――。同時代評から現代まで、漱石文学の「画期的な読み」「刺激的な読み」の醍醐味を大胆に分析するエキサイティングな試み。
内容説明
近代文学が一気に開花した明治後期、漱石文学はどのように評価されたのか。100年後の今も読み継がれる、その魅力とは何か。何万ともいわれる評論・論文のなかから、「個性的な読み」「画期的な読み」を厳選して、「定説を読み換える論」「文化的・歴史的背景に位置づける論」「小説の“なぜ”に答える、意味付ける論」に分類し、その醍醐味と意義を大胆に分析する。
目次
第一章 同時代評とその後の漱石論(小説家漱石のデビュー(明治三八年)
最も豊饒な年だった(明治三九年)
いよいよ朝日新聞社入社(明治四〇年) ほか)
第2章 単行本から読む漱石(赤木桁平『評伝 夏目漱石』;夏目鏡子述・松岡譲筆録『漱石の思ひ出』;小宮豊隆『漱石の藝術』 ほか)
第3章 いま漱石文学はどう読まれているか(『吾輩は猫である』;『坊っちゃん』;『草枕』 ほか)
著者等紹介
石原千秋[イシハラチアキ]
1955年生まれ。成城大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程中退。東横学園女子短期大学助教授、成城大学文芸学部教授を経て、早稲田大学教育学部教授。日本近代文学専攻。現代思想を武器に文学テキストを分析、時代状況ともリンクさせた“読み”を提出し注目される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
45
レポート参考文献。漱石は同時代の人からけちょんけちょんに批評されていたことがわかり、興味深かった。2016/06/11
fseigojp
17
石原千秋 2冊目 実にユニークな漱石論2016/11/14
バナナフィッシュ。
8
文学研究とはどういうことをやっているか初めて(少なくとも私は)知った。鋭い考察がある中、ときたま歴史から紐解いた論文を見かけることもあり、そういう調べもの的なものを読むと私なんかはつまらないと思う。著者の言うように大胆に、ときに枠組みを無視する勢いで論じる方が面白いのではないかと。著者の文学部衰退に対する批判も、いい意味で内輪の学者よりではなく高評価。2015/12/31
6 - hey
6
漱石研究史。漱石作品だけでなく、文学研究とはどういうものなのかを紹介していて勉強になった。2013/06/09
ぶらり
6
何れの論文も唸らせられる。角度は斬新で、深度には敬意を表するばかり。どの作品も再読したくなる。漱石が新聞小説家として、「具体的な読者」「何となく顔の見える読者」「顔のないのっぺりした読者」の三層の読者に別々の楽しみ方で「読める」ように書いていたという石原の仮説は頷ける。だから漱石の世界は深く広いのだろう。それにしても新潮文庫の解説と背表紙案内文は、初歩的「読み」に過ぎ、各作品の誤読案内になってないだろうか。2010/09/04