内容説明
彼らが殺戮者と化したのはなぜか?秋葉原、池袋、下関、大阪教育大附属池田小、コロンバイン高校、ヴァージニア工科大…犯人たちの生い立ちと肉声を克明に辿っていくと、六つの共通する要因が浮かび上がる。いったい何が無差別殺人という「最後の一線」を越えさせてしまうのか?凶行へと飛躍する“心のメカニズム”を、気鋭の精神科医が徹底分析。
目次
第1章 秋葉原無差別殺傷事件
第2章 社会全体に対する復讐(池袋通り魔殺人事件;下関通り魔殺人事件)
第3章 特定の集団に対する復讐(大阪教育大池田小事件;コロンバイン高校銃乱射事件;ヴァージニア工科大銃乱射事件)
第4章 無差別大量殺人は防げるか?
第5章 殺戮者を生み出さないために―何が抑止力になりうるのか?
著者等紹介
片田珠美[カタダタマミ]
1961年広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。仏政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学ぶ。現在、神戸親和女子大学教授。精神科医として臨床に携わりつつ、精神分析的視点から犯罪病理を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のの
19
途中から議論が「対象の喪失」から「喪の作業」にすり替わっていて「んっ?」ってなった。どっから「喪の作業」が出てきたの…? 最終的に共同体の崩壊とか無縁社会の方向に話を持っていけば着地できると思ってるんでしょ…と言いたくなってしまう、特になにか実りがあるわけでもない結論に、精神科医が書いてもこんな感じかー!と思わざるを得なかった。何を期待していたの?と聞かれても困るんだけど。そしてそもそもあんま精神分析らしいことしてなかった、という。新潮選書ってこんなものか…。2013/11/10
SKH
7
著名な「通り魔」的事件を事例に挙げ、精神分析の手法にて共通構造をあぶり出し、無差別殺人における「心」のメカニズムを徹底解析。レヴィンとフォックスの「大量殺人を引き起こす6つの要因」を軸とした考察は論旨が明快。「肥大した自己愛」「対象喪失に対する脆弱さ」、「投影」の作用、被害妄想形成のメカニズム。2015/01/15
たこやき
6
国内4例、米国2例の無差別殺人について綴った書。ただ、人口1億人超で未遂・予備を含めて1300件と例外的事象の殺人。その中で、年間1桁台とこれまた例外の無差別殺人。その中の4例と例外中の例外中の例外を一般化して意味があるのだろうか? しかも、分析と言いつつ、それは週刊誌報道を読んで「こうではないか」と言うだけのもの。強引な解釈も多い。ただの読書感想文としか思えない。2009/09/13
gtn
5
無差別殺人とは、拡大自殺であるとの見解に納得。自責が大きすぎて、自分を滅ぼすのみでは足らず、抹殺対象を拡大するという筋道。いじめ、ヘイトスピーチ、体罰等々多かれ少なかれ今の風潮にも重なる。2018/01/21
中島直人
5
心理学的にも社会学的にも刺激を受けるところの多い本。興味を引きやすいテーマであり、かつ読み易い文章から一気に読むことが出来た。 無差別大量殺人の容疑者は、自分が悪いと思っていない、自らの責任を他人に押し付け一種の自殺として大量殺人を行う、それを防ぐことは難しいとする作者の見解に大きな脅威を感じる。自ら武装するしか、自分を、また家族を守る手段が無いのだろうか。2013/12/04