出版社内容情報
桂は水の神、樟は稲の神――天才花人が木のこころを語り、異能の国文学者がその歴史を語る。松山の椿、小岩の松、山形の樟ほか、全国12ヶ所の「これだけは見ておきたい神木」案内も。
内容説明
桂は水の神、樟は稲の神、松があかす日本語の起源―天才花人が木のこころを語り、異能の国文学者がその歴史を語る。松山の椿、高野山の槇、小岩の松、山形の欅ほか、全国12カ所の「これだけは見ておきたい神木」案内も。木のことを知ると人生も楽しい。
目次
椿
樟
槇
杉
梶
桂
桧
柞
松
白膠木
柳
欅
著者等紹介
川瀬敏郎[カワセトシロウ]
花人。1948年京都府京都市生れ。幼少より池坊の花道を学ぶ。日本大学芸術学部卒業後、パリ大学へ留学。1974年に帰国後は流派に属さず、独自の創作活動を続ける。2009年、京都府文化賞功労賞を受賞
光田和伸[ミツタカズノブ]
国文学者。1951年愛媛県松山市生れ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。現在、国際日本文化研究センター准教授。専門は比較文化・比較文学。主に和歌、連歌、俳諧を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナーキー靴下
70
美しく生けた木と巨木の写真を楽しむ本だろうか、と読んでみるも、それだけではなく、日本人と木、それもご神木と呼ばれるような木12種について深く語られていて、とても興味深い。巨木に対して、畏敬の念、神を感じるのは日本人共通の感覚だろうと単純に考えていたが、ご神木が違ったら、イメージする神というものも少し違った姿になるはず。私はご神木といえば神社のクスノキの大木で、荘厳、という印象だった。常緑広葉樹に光遮られ、仰ぎ見る私は小さく心細い。川瀬さんの生けた木も素晴らしく、生け花は自然風景に繋がる窓のようだなと思う。2021/04/04
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
64
「椿(つばき)」「樟(くすのき)」「槙(まき)」「杉(すぎ)」「梶(かじ)」「桂(かつら)」「檜(ひのき)」「柞(いすのき)」「松(まつ)」「白膠木(ぬるで)」「柳(やなぎ)」「欅(けやき」。“花人”川瀬敏郎さんと国文学者の光田和伸さんが日本全国の神木を訪ね歩く探訪記。『徒然草』や芭蕉など和歌・連歌・俳諧の研究家である光田さんが木にまつわる信仰の歴史を解説し、川瀬さんが極限まで研ぎ澄まされた感性で“神の一枝”を生けていきます。選び抜いた器とたった一本の枝が創り出す静謐な空間を、ただ息を止めて見つめました。2014/10/27
ネギっ子gen
58
【樟は、稲作を守護する木として畏敬の対象になり続けた】天才花人・川瀬敏郎が木のこころを語り、異能の国文学者・光田和伸がその歴史を語る、とんぼの本。全国12カ所の「御神木」と各地の寺社。高野山・金剛峯寺の槇、鞍馬・貴船神社の桂など――。2010年刊。<「白膠木(ぬるで)」黄泉道へ旅立つ死者の傍らに添える杖が白膠木である。戦陣の軍配を作る木であり、密教で祈りの護摩木につくり、また女たちのお歯黒のもとを作る木であった。我々の死と生にこれほど深く関わった木が、今は一顧もされないで、路傍に立ち尽くしている>と――⇒2024/11/02
よこたん
53
“私は花をいけるときは、草木をとわず、どの枝も人に見えるのですが、樟の大枝は人間ばなれしていて、手におえなかった。” 確かに樟ってちょっとこわいと思うときがある。故郷の近くにはあちこちに切ってはいけない木というのがあって、うねるようにそびえ立つ樟であることが多かった。木を避けるように不自然に曲がる道路に違和感を覚えつつも、そういうものなのだと納得していた。厳かな空気漂う大地に根を張る樹木も、川瀬さんにその一瞬を切り取られ、器の中に佇むひと枝も、等しく美しい。光田先生(芭蕉・連歌が専門)の植物愛が深すぎる。2021/01/31
りー
22
華道家の川瀬敏郎さんと、国文学者の光田和伸さんの共著。12種の日本における木についての文章、川瀬さんが生けた木の写真。静かな気分で端正な本を味わいました。①椿…宮中行事で「卯杖」になった地の悪霊を祓う木②樟…虫除け効果から海人達の聖木。古葉は雑草を抑え、稲作にも。③槙…湿気による腐敗に強く橋の材となる。古代の木棺も。④杉…近世では酒樽として。⑤梶…乞巧奠では葉に和歌を書く。白栲のタエは樹皮。⑥桂…水の守り。加茂神社と縁が。以下、⑦檜⑧柞(イスノキ)⑨松⑩白膠木(ヌルデ)⑪柳⑫欅。神木の気配を感じられます。2021/01/30