出版社内容情報
ルネサンス随一の芸術家にして嫌われもの。その栄光と哀しみの人生。ダ・ヴィンチの才能を憎み、ラファエロの急成長を妬み、芸術を愛すると同時にあらゆる人々と衝突した男、ミケランジェロ。彼はいかにして構想を練ったのか? 日々の苦悩は? 家族やパトロン、友人、ライバルとのつながりは? イタリアの人気美術キュレーターが、その複雑なパーソナリティを、老芸術家の回顧録のごとく描いた伝記的小説。
内容説明
ルネサンス随一の天才、その奥に秘められた哀しみと孤独。圧倒的才能を誇りながら、周囲との軋轢が絶えなかった孤高の芸術家。イタリアの人気美術キュレーターが、ミケランジェロになり切って、一人称でその複雑なパーソナリティと人生を描く伝記的小説。
著者等紹介
ドラッツィオ,コスタンティーノ[ドラッツィオ,コスタンティーノ] [D’Orazio,Costantino]
1974年生まれ。美術史家、作家、現代美術のインスタレーションも手がける展覧会キュレーター。イタリア国営放送でアート番組を受け持ち、新聞や雑誌への寄稿も多い
上野真弓[ウエノマユミ]
1959年生まれ。翻訳家、文筆家。ツーリズム別府大使。成城大学文芸学部芸術学科西洋美術史専攻卒業。1984年12月よりローマ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たま
58
著者はイタリアの有名キュレーター、翻訳出版はクレストブックスの一冊とあって文学的香気に満ちた作品を予期して読み始めたが…ミケランジェロ自身が家族や依頼主との関係(おもに金銭の話)と自作をぶっきらぼうに語り、香気はナシ。身体は頑健、人付き合いは下手、石との格闘だけが情熱という人柄がそのまま伝わってきた。メディチ家や教皇らの金の使い方のずさんさ、栄華を誇るための誇大妄想的教会や墓所計画には辟易する。こういう風だったからこそルネサンス期の美術が今日なお燦然と輝いているのかもしれないが。 2024/03/19
星落秋風五丈原
27
ルネサンス期、イタリアは国としては分裂していたのに、天才画家が三人も出そろった。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエッロ、そしてミケランジェロ・ブオナッローティ。本編の主人公である。映画『華麗なる激情』でも、権力者にも我が意を曲げない頑固なミケランジェロが描かれたが、本作もそのイメージを裏切らない。ミケランジェロの書簡や同時代の伝記をベースに書かれた小説であり、想像も加味されている。最終章以外全てミケランジェロの独白になるため、その人物像に異を唱える事が難しい。 2024/01/17
信兵衛
21
訳者の上野真弓さんが最後に「この本を読むあなたはきっとミケランジェロがすきになるだろう」と語っていますが、まさにそのとおりです。それだけの魅力を含んだ一冊です。お薦め。2024/01/07
スイ
13
ミケランジェロが自ら自分の人生を語る、というフィクション。 勢いがあって、目の前で語っているのを聞いているようだった(読んでいて太宰治の「駈込み訴え」を思い出した)。 父親をはじめ家族や同業者、教皇などの顧客との複雑な関係に悩みながら、彫刻に真摯に向き合う姿に引き込まれる。 翻訳も良く、とても読みやすかった。 2024/02/08
ハルト
12
読了:◎ ミケランジェロの生涯を自身が甥へと語る、という体の作品。その過激で気難しく、どこか破壊的で燃え盛る焔のような性格は、彼の手から創られた芸術作品の崇高さとは似合わないくらいに、激情を保っている。美術史家でキュレーターでもある著者の書くミケランジェロは、おそらく史実に忠実で、あまり詳しくなかったミケランジェロの生涯について全体的に知れることが、良かったなと思う。ただ一生の語りを通じて、どこか自分の生き方に言い訳じみた感があったりもする。こういった性格なら、そんな後悔はしないのではないかなと思いもした2024/01/24