出版社内容情報
<辺境>を失った19世紀末、謎の飛行船<不都号>(ふつごう)が目指すは――砂漠都市シャンバラ! 時空を超えた家族の物語、『重力の虹』を嗣ぐ超弩級の傑作長編。
内容説明
“侵入者”は実在していた。歪み始める時間と空間、儚き者たちの恋と運命。“不都号”の面々は自分たちの任務に疑問を抱き始める。トラヴァース家の長兄リーフは賭博師として流浪を続け、次兄フランクはメキシコ革命に身を投じた。末っ子キットはヴァイブ家の元を去り大西洋を渡る。そして唯一の娘「嵐の子」レイクは…。膨大に登場する、愚かしくも滑稽な人物の数々。その愛しさと哀しさ。もつれ合う彼らの生は、やがて訪れる驚愕の一瞬を目撃すべく、急速に収斂してゆく―。歴史小説にしてSF、恋愛小説にしてポルノ、テロ小説にして大河家族小説。綿密な史実の積み重ねが現代を照射し、荒唐無稽な挿話が涙を誘う。文学の垣根を超える貪欲さと自由さが(改めて)世界中の絶賛と茫然を呼んだ空前絶後の巨篇、世界への祈り。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソングライン
14
父ウェブを殺害した犯人と依頼者の資本家ヴァイブを追う3人の息子たちの遍歴を描く下巻です。最新の高等数学、理論物理学と神秘主義、中央集権と無政府主義、資本家と労働者など対立する概念が共存する20世紀初頭の世界、3人は運命に導かれ、メキシコ革命、異次元への入り口中央アジア、そして民族と宗教の対立する激動のバルカン半島に向かいます。家族の愛と20世紀初頭への思い入れが詰まった作品、物語の結末には納得ですが、地図、メモと共に旅した1週間の読書は修行でした。2020/01/18
イシザル
8
読み返しても謎は謎のまま。でも世界中の大自然を旅し、敵対組織と命からがらの激闘、そして恋や愛の物語。インディアナジョーンズのテーマ曲の様な弾む大冒険は実に面白い。2023/06/28
gu
8
初期作品と比べると、『メイスン&ディクスン』『逆光』には何やら結末らしきものが、さらには泣ける場面すらあることに驚く。そして登場人物がやたらと多い。。。出会い・別れ・再会のあらゆる組み合わせを試行しているような。19世紀末~20世紀初頭のオカルトや文化(+ドラッグや幽霊その他超常現象)は、それ自体が何かの喩えであり、また、この作品世界を十全に描き切るための連絡路でもあると思う。作品の内側においては歴史の見えない繋がりを可視化し、引用や参照という形で作品外に枝を伸ばす。2016/10/29
梟をめぐる読書
8
伝説の地〈シャンバラ〉を目指す飛行船〈不都号〉の愉快な面々による、ドン・キホーテ的ワンピース的冒険譚……と思いきや、中盤以降、物語の比重は明らかに、父親を殺害されたトラヴァース家の兄妹たちによる地上の復讐劇のほうへ。これだけ長いと漠然とした印象をまとめることすら困難だが、今はただ、この重さとわけのわからなさをそのまま受け止めたい。いずれにせよ、一冊でセルバンテスからドストエフスキーを経由してジョイスに至るような、稀有な読書体験だったことは間違いないのだから。ピンチョン的、ポストモダンの夜明け。2011/10/06
イシザル
7
時空を穿つ飛行船「不都号」は、時空を改変する事で相対性理論を超えて多次元を航行を可能に。質量保存や重力の法則をも解明。航行する一つの惑星に。〈侵入者〉は、多次元を航行する「不都号」乗員。2019/06/16