内容説明
神話化にもその破壊にも抗する伝記。著者は、サン=テグジュペリの作品や既知の資料は言うまでもなく、未発表の書簡やみずから堀り起こした証言などを手がかりに、女性特有の繊細さと綿密さをもって、この魅力ある人物の実像に迫ってゆく。
目次
大空を制する者―1927‐1928
母なる故郷―1900‐1909
天と地を見つめて―1909‐1915
開けぬ展望―1915‐1920
希望の光―1920‐1922
舞い上がる心―1922‐1926
飛行機が結ぶ友情―1926
任務の迅速な遂行―1927‐1929
石も飛ぶ国へ―1929‐1931
さしこむ影―1931‐1933〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
51
生涯飛行機乗りたらんとしたサン=テグジュペリ。本書は、彼の出生から、’44年第2次世界大戦時、仏本土偵察飛行での出撃・未帰還となった最後までの記録。我儘で甘えん坊、そして繊細で連帯意識とノブレス・オブリージュを持っていたというサンテックスの魅力が満載。記録としての巻頭の写真類、各作品(『南方郵便機』『夜間飛行』『戦う操縦士』『人間の土地』『星の王子さま』『城砦』)背景、更には彼を取巻く女性(母のド・サン=テグジュペリ夫人、妻のコンスエロ、B夫人)との人間関係等、非常に興味深かった。2015/10/12
チャーリブ
22
サン=テグジュペリの波乱に満ちた生涯をさまざまな証言を元に再構成した大作。従来はあまり重視されなかった作家の女性関係にスポットライトを当てたところが類書とは一線を画している点だとあとがきにある。戸籍上の妻、実質的なパートナー兼庇護者、時々の愛人たち、忘れられない元婚約者など、彼の女性関係は複雑怪奇で理解に苦しむ。男性としては誠実な生き方ではないが、自分自身の夢に関してはこの上なく誠実だった。彼はおそらく人生で一番幸福だった子ども時代の夢を追い続けた、よくも悪くも純粋な人物ということになろう。2021/12/25
けいご
17
無邪気に頑固で、大人の癖にわがままで、理想が高いわりに片付けは出来なくて、人を喜ばせた分だけ人に迷惑ばかりかけて、頑張るために悲しみを抱えて、そして空の何処かで死んでいったサン=テグジュペリに会える一冊でした★作品は作家が実際に体で感じてきた事を手紙として綴ったメッセージだったんだね。第二次世界大戦の時は自分の本のせいで大変な目にあったサンテックスへ質問です!戦争が少なくなった今の僕たちはあの頃に比べて自分の目で少しでも正しく世界を見ることが出来るようになれたかな?っとそんな事を思ったり★よい一冊でした★2021/01/11
Hotspur
3
伝記の傑作。「彼はとらえどころがなく、矛盾をはらんでいる。航空業界の開拓者でありながら過去に生き、科学者でありながら何より直感を信じ、作家でありながら、言語と、さらには知識人とに不信感を抱いていた。封建君主的な世界観をもちつづけたが、貴族の生活につきものの飾りや務めは避けていた。友愛を讃えたからこそ名声を博したのに、実はエリート主義者で、団体行動ができず、規律と義務を讃えながらも規則破りを繰り返した。ありとあらゆる学派からかわるがわる利用されながら…つまるところ、どこからも自派のものとはされなかった。」2019/03/18