内容説明
19世紀末、大旱魃に苦しむブラジル北部の辺境を遍歴する説教者と、彼を聖者と仰ぐ者たち。やがて遍歴の終着地に世界の終りを迎えるための安住の楽園を築いた彼らに、叛逆者の烙印を押した中央政府が陸続と送り込む軍隊。かくて徹底的に繰返された過酷で不寛容な死闘の果てに、人々が見たものは…。’81年発表、円熟の巨篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ずっきん
94
19世紀末に起こったブラジルはカヌードス紛争を描いた、歴史群像エンターテイメント。多彩な登場人物が縦横無尽に織りなすドラマ。支えるテーマは柱のようで太く揺るがず、カットバック多用の断章仕立てがスリリング。善悪や美醜ではなくあるがままの淡々とした描写は、誰の行く末の予想もつかせず、祈るような気持ちで物語の波にのまれていく。そしてそれは突然訪れる。うわああ、むちゃくちゃ面白かった! ノルデスチのギターの旋律が聴こえる。歌声は伸びやかで美しい。だが、隠しきれない哀しみが尾を引いて、はかなく消えていくのだ。2022/01/04
三柴ゆよし
48
読了まで約十日。放心するほどにおもしろい小説を読んだのはひさしぶり。狂信者の群れVSブラジル国軍という図式からしてヤバいが、その中に、善と悪、野蛮と文明、帝政と共和政、内陸と沿岸、自由と服従……という二元論がこれでもかと詰め込まれ、そのいずれもが泥沼の殺戮劇の中に沈みゆく、無茶苦茶な物語なのだ、これは。というよりもむしろ物語化不可能とも思われる歴史の一葉を、力業でねじ伏せ、見事自分の文学へと昇華させたリョサ先生の一本勝ちであり、これを最後まで読んで「つまらない」と言う人とは友だちになれそうもない。大傑作。2014/04/26
のりすけたろう
40
あー\(//∇//)\面白かった🌟バルガス・リョサは、かなりお気に入りの作家なんだけど、この作品は、めちゃくちゃ傑作だった✨700ページ上下段という長さも満足なくらい傑作でした㊗️登場人物がみんな濃い人たちで、終盤どうなるのか一人ひとりに対してハラハラしまくりでした。次は、マイタの物語です(´∀`*)💕2021/07/16
たーぼー
36
南米文学特有の捉え難い時系列、膨大な人物量に振り回されたがなんとか完読。ここに描かれているのは常に物語の根幹に寄り添う英雄主義的「国家」と原始的「信仰」の対立構造であり、善も悪も二極論で割り切れぬ者達の世紀末的戦いだ。そこに著者のたぎる南米人としての情熱が加わり作品に巨大なエネルギーを齎している。もう、ここまできたら読者は壮絶な生と死の展開に何を期待し、誰に感情移入するか嫌悪感を抱くなりするかだ。ただ、主人公達が目指した理想郷があまりに危険なものと感じるのは否応なしに現代社会に置き換えてしまうからかな。2015/04/08
touch.0324
33
鉄板の面白さ。19世紀末に実際に起きた『カヌードスの戦争』を基にした作品。キリストの再来ことコンセリェイロ率いる狂信者(ジャグンソ)VSブラジル陸軍という展開には燃えずにいられない。ジャグンソの激しい抵抗に次第に苛烈さを増す戦場は、硝煙に視覚と嗅覚を奪われるような錯覚に陥る。初期衝動の『都会と犬ども』、実験の『緑の家』ならば、重厚さ、読みやすさ、エンタメ性がバランス良く同居した本作は"円熟"。単行本2段構えで700ページ超という巨編なので、気長に取り組むことになる点だけ注意。2014/09/19