出版社内容情報
丹念な自然描写でアナグマの生態と受難を歴史的に繙き、現代における動物と人間のあり方を問う英国ネイチャー・ライティングの傑作。
内容説明
夕暮れどき、奇妙な黄昏の世界に迷いこんだら、そこはもう「アナグマ国」の入り口だ。アナグマ保護活動家だった祖母の足跡をたどり、人間よりはるか昔からこの地に住み親しまれてきた謎多きアナグマの生態と受難の歴史を繙いてゆく。迷宮のように入り組んだ巣穴での暮らし。何世紀にもわたって続いてきた血なまぐさいアナグマ狩り。ケネス・グレアム著『たのしい川べ』で一躍人気者になるものの、ウシ型結核の温床としてイギリス中を大論争に巻きこむ社会問題に…。
目次
ブラックアンドホワイト
Meles meles
外敵
アナグマ氏
Brock
ボジャー
害獣
ハッカ飴
デインティー、大将、そしてエレイン
餌食
患者
ピーナッツ食らい
昼食
ベラ
ベシーとバズ
「うちのアナグマ」ではない
著者等紹介
バーカム,パトリック[バーカム,パトリック] [Barkham,Patrick]
1975年英国生まれ。ノーフォーク在住。ケンブリッジ大学卒。ガーディアン紙で特集記事を担当する記者。イラク戦争から気候変動、動物まで、社会と自然に関わる幅広いテーマを取り上げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワッピー
34
イギリスにおけるアナグマ問題のルポルタージュ。古来からアナグマを害獣としてきたイギリスでは、巣を掘ってアナグマを捕らえるアナグマ掘り、捕らえたアナグマに犬をけしかけて惨殺する闘狢が広く行われ、近年ではウシ型結核を媒介する動物として目の敵にされてきた歴史がある。一方、これまたイギリスらしい自然保護の立場からアナグマを守るべきと考える保護論者も多くいて、保護と駆除の方針を巡る政治的な綱引きの問題として、イギリス政治社会の側面も知ることができます。従来あまりいいイメージではなかったアナグマ像が名作児童書の古典⇒2021/02/28
ばんだねいっぺい
25
ちょっと思っていたのとは、違ったが著者の愛するアナグマのためのメッセージを発する切実さが胸に迫った。人種差別などあるが、動物もまた、いかに迫害されていることか。そして、アナグマを擬人化させる絵本の力の素晴らしさも感じた。いろいろと思うところがあった。2021/03/14
ようはん
20
日本だとアナグマはいまいちマイナーな動物のイメージは強いが、イギリスだと人気創作物の主人公となったのもあり日本でいう狸ぐらいのポピュラーな立ち位置にあるのではないかというぐらいに感じる。上流階級のキツネ狩りに対して労働者階級で普及していたのはアナグマ掘りであるが、犬をけしかけてアナグマと闘わせる描写はかなり陰惨で禁止令が出るのも理解できる。それでも密かに行われている問題や、牛結核を媒介するとの事で駆除対象になるゴタゴタが生じてしまう等、難しい話である。2024/03/20
vonnel_g
3
イギリスにおけるアナグマの歴史と今。ネットニュースでアナグマ被って踊っている人たちの映像を見た人も多いと思うけれど、牛結核の運び屋と目されて駆除されており、その反対運動のためのものだそうで。ここで書かれているワクチンの結果は出たのだろうか。あの運動を主導しているうちの一人ブライアン・メイのインタビューも掲載されているのでファンは読むといいと思う。2021/03/14
御庭番
2
読売新聞の書評か何かに載っていて、興味をもった。 アナグマ国というタイトルにも惹かれる。日本ではアナグマはあまり身近な動物ではないが、ディズニーアニメーションなどでも出てくるように、欧米では春を教えてくれる動物としても知られるくらい、存在は子供でも知っている、と思ったら!そんなアナグマのイメージを覆すような災難だらけであった。自然と人間の接点を考えさせられる。【図書館で借りました】2021/03/15