内容説明
失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。最近出所した犯人からの手紙によって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流のように溢れ出したのだ。誘拐犯と被害者だけが知る「真実」とは…。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年、金沢生まれ。’93年、『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、’98年、『OUT』で日本推理作家協会賞、’99年、『柔らかな頬』で直木賞、2003年、『グロテスク』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞
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感想・レビュー
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優希
99
最初のうちはどこが残虐なのか疑問でした。ただ、1年にも及ぶ監禁生活を見ていると、歪んだ空間があり、鳥肌が立ちます。自分が閉じ込められる生活から解放されたその後の方が残酷な気がしました。あの生活があったからこそ生まれた負の遺産。事実などがはっきりしない少女が出てくるだけに、色々読者が想像しなければならないように思えます。2017/08/15
nakanaka
74
主人公は十歳時に約一年間誘拐監禁された経験を持つ女性作家だが、突如彼女が失踪したというところから話は始まる。彼女がパソコンに残した手記という形で話は進む。それにしても手記の最後での告白はショッキングだった。様々な事柄が事実なのか想像なのか分からない点がモヤモヤするが、それが作者の狙いか。センセーショナルな題材なだけに興味深くはあったが、終始どんよりと暗く生々しさの漂う作品だった。今回が初の桐野作品だったが、数多くの受賞歴のある作家さんなのでこれからも手に取っていこうと思う。2020/02/21
そのぼん
69
幼い頃、変質者に監禁された過去がある作家の手記というかたちでストーリーが進みました。読んでいて、全体的にどう解釈したらいいのか難しい感じがしました。なんだかとても不愉快で居心地の悪い気持ちにさせられる作品でした。2013/03/13
ゆみねこ
67
小学校4年生の女の子が、若い男に拉致され、工場の2階にある部屋に監禁され1年余りを過ごす。女の子の恐怖と解放されてからの違和感、周りを信じられなくなることの辛さ。事件から25年を経て作家となった被害者は、刑期を終えた犯人から届いた手紙をきっかけに失踪してしまう。こういう事件の被害者は解放されてそこでメデタシメデタシとは行かないことは理解しているつもりではあるが、何ともやりきれない読後感です。桐野さんらしい作風といえば、そうなんだけど。気分が落ち込んでいるときには、読まない方がいいと思いました。2014/10/03
風眠
52
手記の中の小説、という多重入れ子構造に、想像と現実が判然としないまま絡み合って、仮説が次々と打ち砕かれ、どれが真実かも明らかにされないまま藪の中、となっていく。少女誘拐監禁の話というよりは、ケンジとヤタベのラブストーリーのように私には感じられた。ケンジとアナのセックスは、どんな暴力よりも、どんな悲しみよりも、ケンジとヤタベの間に切ない恍惚を感じさせる。母と景子、父と景子、父と母、ケンジと景子、ケンジとヤタベ、全ての関係が狂気に満ちた歪んだ性であるが、歪んでいない性など存在しないのでは?と考えさせられた。2011/06/06
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