内容説明
「会っている数日のあいだ、わたしたちはセックスしかしない。おぼえたての高校生のままみたいに」十七歳のわたしたちが互いに向けたのは、ただ、欲望だった。それから八年。上京した彼は年に一度だけ故郷に帰ってくる…。上京、就職、結婚と、人生で最初の岐路に立つ主人公が振り返る、忘れられないセックスの記憶。少女から女へ、少年から男へ。心と身体の移ろいを瑞々しく描きだす全七篇。
著者等紹介
豊島ミホ[トシマミホ]
1982(昭和57)年、秋田県生れ。早稲田大学第二文学部卒。2002(平成14)年、「青空チェリー」で第一回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
95
およそ13年ほど前にR18文学賞受賞作『青空チェリー』を読んで以来の豊島さん作品です。R18文学賞作家さんならではのエロティックな描写が前面に押し出されています。7編からなる短編集で、200頁弱でもあり、アッという間に読了でした。あらゆる角度からとらえたセックスに関する描写を純愛小説テイストでまとめる作者さんの手腕はさすがですね。全体的にどの話も何とも言い様のない切なさや儚さが漂っているので、あまり明るい気分にはなれないかな。繋がりがある2編中心に郷里への思いも綴られており、色々と考えてしまう作品でした。2024/04/07
モモ
52
短編集。2話だけつながりがある。どれも、そう幸せそうではない恋愛。身体の関係だけでつながっているようで、その心と心は埋めつくしがたい距離があり、読んでいて寂しくなる。一年に一度だけ、来るか来ないか分からない元恋人を待つなんて、耐えられない。純情なのか?ぬかるみに沈んだような微妙な読後感でした。2022/03/03
lonesome
51
七つの短篇からなる短篇集で「指で習う」と「春と光と君に届く」は以前に読んだことがあったけれど「小説新潮」で読んだのだったか。そして実はこの短篇の並んでる順序が上手だなと思う。そのことによって最後に収められた書き下ろしの「結晶」が書かれた意味のようなものが、またなぜ「結晶」というタイトルなのか、豊島ミホの小説家としての気持ちを想像させる。でもそれを抜きにしても単純にこの短篇集の色っぽさも好きだ。2014/03/05
takaC
44
タイトルにあるのだから、elegy だと知りつつ、予想を裏切る終わり方を期待してたりもした。2011/05/22
星群
39
この感情に、名前を付けるとしたら何というのだろう。愛とか恋とは、似ているようで違うもの。私は、感じたことのない感情。いや、私が自覚してないだけで、経験しているのかもしれない。そう思った、晩夏の昼下がりのこと。印象的だったのは『春と光と君に届く』と『スイカの秘密を知っているメロン』。2012/08/28