内容説明
「定年になったら、一緒にこの曲を合奏しよう」妻と交わした約束だった。そのために、ピアノを習った。二人の楽しみのはずだった…。突然の訃報、独りきりの家、人生設計の破綻。それでも「大人のピアノ教室」に通い続ける証券マンに、光はさすのか。混乱の中で立ちすくむ時、懐かしい妻の声がよみがえる―。夫婦の愛の物語。
著者等紹介
本岡類[モトオカルイ]
1951年千葉県生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に入社。81年「歪んだ駒跡」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。多くのミステリ作品を発表してきた。千葉県在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れみ
56
妻を突然亡くした主人公の仁科が、妻のヴァイオリンと共演するため通っていたピアノ教室の面々とともに、行きがかり上関わることになったビルマ(ミャンマー)人家族の窮状を救うために動きつつ、妻の死や生前の姿を知ろうとしていくお話。美佐先生の元教え子の男の子のエピソードにぐっときてしまった。なんとなく、もっと色々話が広がって行くのかなあと思ったエピソードがあった気がするのにそれほどでもなかったかなあという気もしたけど、最終的にはいいお話だったので良かった。2015/05/27
おぎわら
19
十年半ぶりに再読。定年の近づいた証券マン、音大出でヴァイオリンを弾く妻との合奏を目指してピアノを習い始めた矢先に、その妻に先立たれてしまう。これは切ない。しかも若いころ留学していたオランダに一人旅で出かけ、宿泊先の部屋に旧知の男性を招き入れていた時に倒れたため、主人公は疑念に苛まれることになる。この辺はミステリタッチ。ピアノ教室の教師や受講仲間、ひょんなことから関係するビルマ人難民との関係が絡みながら話が進む。読み返してみると不満な点も多々あるのだが、やはりラストが良い。音楽の力もあるが、泣ける。2018/03/08
norstrilia
19
最後の演奏シーンは、よかった。正直それ以外のエピソードは蛇足に感じられたし、物語の展開もどことなく無理やりな感じが否めなかった。 (あくまで個人の感想ですが)2015/11/29
かめぴ
14
最後がいい。久々に泣いた。そのとき相手はどう思うか、身につまされるがそのときに気づけるか、などど深く考えた。国際的な問題が出てきたときはアレ?なんて思ったが、なかなかどうして。良かった。と思う。2016/12/10
tomoe
10
夫婦の愛を描いた、とても美しい珠玉の物語。大人のピアノ教室に通う4人がビルマの難民の少女と出逢い、それまで知らなかった世界に触れて人生観、考え方が変化してゆくのだけれど私も彼らと同じく影響を受けた。今まで目を向けてこなかった難民問題に興味を持てた。ラストの主人公仁科が、妻の遺した「愛の挨拶」のヴァイオリンソロのテープと合奏する場面は本当に素晴らしかった。最上のラストシーン。2010/05/24
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