内容説明
樹々の緑にいろどられ、雨の日には緑の島になる公園。都会のオアシスのようなこの場所に、あの人はきっといるはずだ、という確信がある…。少年野球のコーチ、夫に裏切られた女、高層マンションの1室にひとり暮す老婆、骨折したテニス青年、推理小説家の孤独なハイミス。さまざまな眼が織りなす“あの人”と私の物語。
目次
6月
雨
あの人のいない日
夏の終わり
蝙蝠
はじまり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
8
誰にでも経験があるかもしれない。いつもいつも同じ場所で目にする人。どんな人なんだろう・・・何をしている人なんだろう・・・いくつなんだろう・・・謎のあの人に夢中になること。いろんな人が「あの人」を目撃し意識しているけどまるで煙のように印象が無い。だた・・・「あの人」と心の中にボンヤリ浮かぶだけ。公園って・・・不思議な場所・・・。2010/04/27
rinakko
7
再読。“あの人は今日も来ている”という、冒頭の一文が忘れがたい。様々な誰かに似ているけれどその誰でもない“あの人”の姿は、公園という場で幾つもの眼差しの焦点になる。紫がかった帽子と黒い自転車、細い首…。その姿を探し、熱心に見つめる登場人物たちは、その姿を通して己を見つめ返していることには気付かない。各々の内のぽっかり開いた虚ろな場所に、彼女の輪郭を知らずに合わせている。だから、昔の恋人や自分を置き去りにした母、自ら命を絶った娘や夫の愛人のようにも見えてくる。それぞれの思いの先に。“あの人”は誰だったのか…2018/07/19
crf2
0
一気読みだった2022/09/08
Nori
0
ある公園に関わる人たちのそれぞれの人生の物語。静かにそれぞれの悩みや生活を丁寧に描いていて個人的には好きな作風でした。登場人物の中ではミステリ作家がいちばん好きです。2021/02/23