内容説明
奥州、東国、畿内、西国。言葉も習俗も違う民族が分離独立していた平安末期。源義経は奥州の地にいた。京の都より後白河法皇の院宣が届く。曰く、平家を討伐せよと。父の仇を討つ、その宿願を胸に義経は出奔。一方、兄頼朝は源氏再興の機をうかがい、東国を中心に遠大な計画を練っていた。真の「義経」を描く超大型歴史小説。
著者等紹介
安部龍太郎[アベリュウタロウ]
1955年、福岡県生まれ。作家を志して上京し、図書館勤務を経て、1989年「週刊新潮」に『日本史 血の年表』(単行本化にあたり、『血の日本史』と改題)を一年間連載。鮮烈な作家デビューを飾る。以後、南北朝、関ヶ原、織田信長、幕末の薩摩島津など重厚な主題や人物を描いた歴史大作を数多く発表し、好評を博す
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感想・レビュー
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pdango
31
★★★★☆大河ドラマと、さきに読んだ永井路子「北条政子」「炎環」のおかげで、この時代をより楽しむことができた。義経の相撲を梶原景時が中止にさせるくだり、侍所から参加者に中止を伝える触れを出したり見物人への銭の返却の面倒をみたりといったフォローの部分まで描かれている。そういう細やかさが、この時代を垣間見ている気分にさせてくれるのだと思う。2022/03/07
藤枝梅安
3
宮尾本「義経」とは違った切り口で頼朝、義経、そして後白河上皇を描いている。 上巻に納められているのは平成13年9月から平成15年3月まで「小説新潮」に連載されたものである。 伊豆・韮山に流されていた頼朝の挙兵に呼応し、義経が奥州・平泉を発つところから、 一の谷の合戦のあと、義仲の遺子・義高が謀反の疑いにより誅殺されるまでの話しである。2010/01/16
よっちゃん
2
既成の人物像にそなわる善悪の魅力を活かしながら、しかし冷静に時代背景をかぶせれば、読者をうならせる新しい人物像が浮かび上がる。意欲的な作品である。ある部分で偶像義経の破壊である。それは政治家頼朝の積極評価につながるものだ。判官贔屓の大衆心理はまだ生きているのだから、トンデモ本、歴史考証の書ならともかく、大衆小説としてはかなり異色の作品といえよう。そして読後、義経ファンである私もこのふたりの実像はこんなものだったろうと素直に受けとめられた傑作である。 物語は兄弟が平家打倒の決意を固めるところから始まる。2005/03/22
鬼山とんぼ
1
頼朝・義経のダブル主人公で鎌倉幕府創成期を描く。平家物語でお馴染みの人物や情景が盛り込まれ読みやすかった。生い立ちや立場の違いでこれほどまで兄弟が対立するかと当時の状況が思いやられる。司馬遼太郎の描く短躯で反っ歯の義経とは大分趣きが異なるし、常に裏切りを警戒し小心翼々とする頼朝像も新鮮だった。「血の日本史」でデビューした作者だけにこの辺の描写や事情説明はお見事。伊豆弁の政子は「細腕繁盛記」で小姑の正子(音が同じ)役を演じた富士眞奈美(静岡出身)をイメージして描いたと思う。寝業師の後白河法皇の扱いも見事。2018/07/31
ちかまる
0
この時代の小説はあまり読んだことがなかったが、源平の盛衰がよく理解できた。2017/06/25