内容説明
詩の発火点となった遍歴を浮彫する、凄烈な生の全貌。昭和の第一線詩人の詩魂に迫る!
目次
1 境涯の発端―風狂の出自
2 去留定めなき幼年時代
3 大阪陸軍幼年学校入学
4 父親の遺した一穂の焔
5 陸士予科時代、反骨の学友たち―二・二六事件の原点
6 陸士脱走の真相
7 三高時代―詩作の模索
8 萩原朔太郎との出逢い―東大仏文科時代
9 画期的訳業《巴里の憂鬱》から処女詩集『測量船』へ
10 発哺の療養期―結婚、「四季」の創刊
11 詩壇の第一線で―歩みくる冬の跫音
12 述志の詩の曙光―大戦と朔太郎長逝
13 離婚、越前三国隠栖、敗戦
14 戦後の詩人の真情―「なつかしい日本」
15 流寓独居の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
駄目男
6
三好達治の詩は書評やコラムに載ることが少ないように思う。著者も言っているが、現在では中原中也の方が売れていると。ただ三好の異色なところは詩人にしては珍しく職業軍人を目指したところではないか。このような経歴は他の詩人で聞いたことがない。奇縁なのは二・二六で有名な西田税と同期で、かなり深い親交があったが、三好が軍を脱走したことで二人の交流は途絶えた。免官になったたことは、後年の西田の運命を見ると良かったことになるのか。三好の詩は難しい漢字を使い過ぎ、硬質で現代人には深層を表す表現として適当とは思えない。 2019/11/08
ポン・ザ・フラグメント
6
三好達治が二・二六事件をどう受け止めたか知りたくて読む。残念ながら、著者の詩人に対する崇敬の念が強すぎて、ここに描かれている姿にはかなりバイアスがかかっていると考えざるをえない。陸士脱走や、戦争詩問題、離婚の経緯等を見るかぎり、著者は筆舌を尽くして弁護しているが、三好達治という人物は「短慮の人」である。自分で自分の気分を増幅させて最終的には行き過ぎた行動に帰結する。物語の主人公には向いているかもしれないが、実生活では迷惑この上ないタイプだなぁ。2015/05/21
せっぱ
1
幼少期から学生時代のエピソードが活き活きとしている。徒歩,野宿旅行を敢行する強靭さや意志の強さ、クラスを代表しフランス語で教師を迎える姿、細やかな詩作を生み出す観察眼など興味が尽きない。最後の日々が綴られた場面は桜の描写に哀感が込められている。2015/05/07
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- 和書
- 知床望郷の殺意