出版社内容情報
今日こそ彼らに往復ビンタ。もやもやはびこる職場と私を描く芥川賞候補作。同じ部署の三人が近頃欠勤を繰り返し、その分仕事が増える私はイライラが頂点に。ある日、三人のうちの一人、先輩女性の下村さんから、彼らの三角関係を知らされる。恋人を取られたのに弱っているのか開き直っているのか分からない下村さんの気ままな「ダンス」に翻弄される私は、いったいどうすれば--新潮新人賞受賞作。
内容説明
私はいらだっている。同じ部署の三人が近頃欠勤を繰り返し、三人分の仕事をやらされるからだ。ある日、三人のうちの一人である先輩女性下村さんから、彼らの三角関係について知らされる。弱っているのか開き直っているのか分からない下村さんに振り回されながら、私の人生講習は続く。新潮新人賞受賞作。芥川賞候補作。
著者等紹介
竹中優子[タケナカユウコ]
1982年山口県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2016年に「輪をつくる」50首で第62回角川短歌賞、2022年に第一歌集『輪をつくる』で第23回現代短歌新人賞を受賞。同年、第60回現代詩手帖賞を受賞。2023年、第一詩集『冬が終わるとき』で第28回中原中也賞最終候補。2024年、本作で第56回新潮新人賞を受賞、第172回芥川龍之介賞の候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
159
★第172回芥川賞候補作&受賞作、第四弾(4/5)、竹中 優子、初読です。芥川賞受賞作の結果を知らなくても、頁数と内容から、私だったら本書を推しません。またタイトルは、ダンスではなく、ビンタの方が好かったと思います(笑) なお最後の候補作「字滑り」は、単行本化見送りという事で、全5作コンプリート出来ません( ;∀;) https://www.shinchosha.co.jp/book/356081/2025/03/03
シナモン
106
新潮11月号で読了。芥川賞候補作。「好きか嫌いかでいうと好きで、得意か苦手かでいうと苦手」こういう感覚分かる。怖いこともさみしいことも嬉しいことも、生きていくっていろいろある。主人公の目を通して語られる下村さん。お騒がせな感じの印象が読んでいくうちに愛おしく思えてくる。自分の感情に素直な人。読みやすくて良い話だった。 2025/01/06
fwhd8325
81
著者竹中優子さんは、数年前の文学フリマで自主出版作品を直接販売されていました。作品は、小説、詩、エッセイ、短歌と盛りだくさんでした。そしてその作品集のタイトルが「かまぼこ」でした。まじめでいてユーモラスな作風は、この「ダンス」でも感じることができます。太郎が登場する場面からが好きです。そして、時が経ち、いろんな意味で消化した下村さんと主人公。しっかり足跡を感じる文体が心地良いと感じました。2025/03/11
りゅう☆
68
「三人まとめて往復ビンタをしてやろう」先輩下村さんの同棲中の恋人かまぼこ1が浮気相手かまぼこ2とデキた。同棲解消で休みがちな下村さんの担当業務を押し付けられた私。ある日、下村さんとの距離が縮まり振り回される日々。腹立つけど放っておけない。やっぱりビンタしたいと思う気持ちを素直に言うのが微笑ましい。部署移動で疎遠となり、結婚する時には連絡先も分からず。十数年後の再会で色々な事があった三十代を「いい三十代」と思わせてくれた下村さん。荒れたり、穏やかだったり、爽やかだったり。下村さんって風のような人だと思った。2025/05/28
かみぶくろ
46
3.6/5.0 文章がシンプルで読みやすく、伝えたいことも分かりやすい作品で、純文学では逆に珍しいかもしれない。なにごとにも全力で取り組み、ゆえに社会的には生きづらさもあるであろう下村さんの生き様がダンスに例えられ、違う種類の生きづらさを抱える主人公は舌打ちしつつも憧れる。二人のやり取りやエピソードが絶妙で、心地良い感性に包まれるように話が進む。ただ、良い作品だとは思うのだけれど、なんだか柔らかい風のように過ぎてしまい、なにかが残る手触りは薄かった。2025/02/13