出版社内容情報
『明け方の若者たち』の著者、待望の最新長編は波乱の結婚譚――3歳年上の彼女へのプロポーズ。人事部の若手社員として関わったハラスメント疑惑。何の変哲もなかった雨宮守の人生は、26歳で大きく動き出す。恋も仕事も理想は幻想へと変わり、目の前の現実と向き合い始める20代後半――過去からも未来からも逃れることのできない世の中で、光を求めて彷徨う者たちの物語。
内容説明
―出逢って八年。付き合って六年。同棲を始めて二年。もう僕らのあいだに、新鮮な出来事はほとんど残されていない。いつものスペインバルで年上の彼女にプロポーズした青年・雨宮守。長年連れ添った妻に離婚したいと告げられた中年・土方剛。世代も価値観も正反対だったふたりの人生は、社内のある疑惑をきっかけに、変化し始める。夫婦であること、家族であること、働くこと、生活すること、傷つけること、生きること。過去からも未来からも逃れることのできない世の中で、それでも光を求めて彷徨う者たちの物語。
著者等紹介
カツセマサヒコ[カツセマサヒコ]
Webライターとして活動しながら2020年『明け方の若者たち』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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うっちー
47
違うニ世代の男性の問題点が描かれていました2025/01/09
ひめか*
46
ハラスメントという極めて現代的なテーマ。結婚を控える人事部の若手社員・雨宮と、妻に別れを告げられ娘にも嫌われる中年・土方の視点が交互に描かれる。気に入らない社員には叱責し、気に入った社員に依存し何度も飲みに誘う。飲みを断ると怒る。本人はそれが教育だと思っていて、自覚がないのが怖い。威圧的な土方の精神が壊れ、友達に救われて生活を立て直す兆しが見えた場面や、奥さんとの再会場面が良かった。雨宮も気づかずに彼女を傷つけていたのは意外。誰でも加害者になり得る。許されずとも、反省と謝罪の心を忘れず未来を生きてほしい。2024/10/13
sayuri
46
令和のリアルを感じた。年上の彼女にプロポーズした青年・雨宮守と、長年連れ添った妻に離婚したいと告げられ娘にまで見限られた中年・土方剛。世代も価値観も異なる二人の男性を軸に物語は展開していく。土方に至っては老害そのもの。妻を奴隷のように扱い、会社ではパワハラ・モラハラ三昧。明らかに加害者であるのに己を被害者と言い張るさまに開いた口が塞がらない。方や一見何の問題もなさそうな雨宮にしても過去に「無自覚の加害」をしていた。加害者の忘却、まさにいじめの図式と重なる。自分は大丈夫と思っている人にこそ読んで欲しい作品。2024/08/03
Tαkαo Sαito
29
カツセマサヒコさん作品からしか得られない栄養がある。読んでいて苦しくもあり、清々しくもあり良い作品だった。読んでいて終始刺さりっぱなし、それでもラストが最高だった。これからもカツセマサヒコさん作品は追い続ける。2024/08/04
かさお
28
ジェンダー平等、多様性が叫ばれる今、読むべき本であり読んで良かったと、心の底からそう思う。ハラスメント、ジェンダー観について、男性作家が書いたことに興味を持ち読んでみたら、すごく良かった。年齢も性格も違う2人の男性を中心に話は進む。自分は有益であり、良かれと思い価値観を押し付ける傲慢さに反吐が出そうになりつつ、そうか、本当に本人には分からないんだ、客観的に見られないんだ、と愕然とした。出来すぎなドラマとは違う、至極現実的な展開だった。ひとりでいい、傷つけるくらいなら。それでも手を伸ばすのか。う〜ん、難しい2024/10/25