出版社内容情報
街とその不確かな壁 村上春樹【著】
村上春樹6年ぶり待望の刊行!『街とその不確かな壁』は最新長編1200枚。
その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語"が深く静かに動きだす。
魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。
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・『街とその不確かな壁』について
・【コラム】アメリカでの村上作品
・村上春樹 ブックリスト(小説)
内容説明
その街に行かなくてはならない。なにがあろうと―。高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そして、きみの面影。村上春樹が、長く封印してきた“物語”の扉が、いま開かれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
751
村上春樹の集大成かとも思える作品。この小説の原型は、はるか1980年にまで遡る。「文學界」に掲載された中編小説がそれである。その躊躇いと再構築がようやくにして実を結んだのがこの作品。不確かなのは街を取り囲む壁だけではない。自己の存在もまた、そして私たちがこちら側の世界と信じている世界そのものもまた不確かなのである。650ページにおよぶ長編だが、この作品を読んでいる間、私たちもまた虚構の遠い世界の果てをさ迷う。そして、物語の最後に迎える終末において、私たちは圧倒的なまでの寂寥感をともにすることになる。2023/10/08
ミカママ
749
壁のあちら側とこちら側、十六歳のままのきみと四十を過ぎたぼく、初恋と現在の静かな恋、ぼく自身とぼくの影…さまざまな対比と暗喩を軸に独特のパラレルワールドが、我々を翻弄する。「今自分はどこにいるんだろう」という気持ちにさせられて。明らかにダイナミズムの違う3つの部、個人的には第一部についてずっと読んでいきたかったが、第二部のぼくと子易さん、不思議な少年との静かな絡みも捨てがたい。そしてなによりクライマックスの第三部で、おおぉ、そうきたか、と気持ちをさらわれる。いつものように読者は置いてきぼりにされたまま。2023/04/20
starbro
562
私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上春樹の新作をコンスタントに読んでいます。本書は6年ぶりの長編、初恋パラレルワールド図書館ファンタジーでした。傑作とまでは言いませんが、今年のBEST20候補作です。どうせなら666頁が好かった。 このレビューは、The Beatles YellowSubmarineを聴きながら書きました♪ https://www.youtube.com/watch?v=m2uTFF_3MaA https://www.shinchosha.co.jp/special/hm/2023/05/23
いっち
499
40年越しの仕事って、どうなんだろう。想像もつかない。1980年9月の『街と、その不確かな壁』に、村上さんは納得がいかなかった。長編にして書き直した『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』にも、結果的には満足しなかったようだ。今回の新作。当初は第一部だけだったらしい。半年寝かせ、第二部以降を書いたとのこと。第二部以降があって良かった。40年以上の作家経験や、歳を重ねたことが、作品に出ているように感じた。締切のない仕事だから、続編を書けたのだろう。作家の金銭的余裕が、良質な作品には不可欠だと思った。2023/04/16
bunmei
479
本作は1980年に一度、文芸誌に掲載されたが、著者が納得のいかずに書籍化はされていない。その後『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を執筆。そして40年の時を経て、この2つの作品をベースに、『現実』と『非現実』を行き来する展開と、濃厚で緻密な言葉や文章に彩られた、村上文学の神髄とも言える長編小説として、再び陽の目を浴びた作品。題名の『不確かな壁』とは、現実世界において、居場所を見いだせない者が、安心して身を置ける、外界と隔絶した閉塞的な空間にする為の、心のバリアや内なる葛藤と感じた。2023/04/30