内容説明
15歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。古い図書館の書架には秘密が満ちている。夜の風がはなみずきの枝を揺らせるとき、いくつかの想いは静かにかたちをとり始める。県を越えて陸路で四国を移動するとき、人々は深い森と山を越えることになる。いちど道を見失うと、戻るのは困難だ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
84
再読。当たり前なのだろうけど、10年前に読んだときとは感じ方が違う。ファンタジーと現実が入り乱れる感じを、そのまま楽しめばいいのに、ついつい深読みしてしまう自分がいる。森の奥に入り込んで、少女と再会して、そしてまた森から出て現実に戻ってくるカフカ少年。そのフアンタジーの部分はきっと、15歳のカフカ少年の深層心理を可視化し、言語化したものなのかな、とか、まわりくどいけどつまりは少年の成長物語なのかな、とか、いろんなこと考えながら読んだ。それでも村上春樹の描く世界はとても美しいな、こういうの嫌いじゃないな。2013/08/04
mug
57
不思議な読後感。 結局あれは何だったの?? どういう状況なの?? 疑問が多々残りつつも、 心地は良い。 『言葉で説明しても正しく伝わらないものは、 まったく説明しないのがいちばんいい』 この言葉があったから、 回収されなかった様々なことが 受け入れられるのかも🤔 なんて、都合良く解釈してみたり😄💦 周りはぼやけているのに、 芯の部分に何かが届いてくるような感覚。 やっぱりなんか、不思議😊2021/11/06
キク
50
「街と~」との関連は多分散々いわれていると思う。でも今回の再読で僕は「多崎つくると~」との関連性が気になった。両作品とも、「幼いもの同士の限定され完結した奇跡のような関係性」「その関係性を壊そうとする社会に存在する黒いものとの戦い」「戦いの痕の修復を試みる、幼いが強いものとしての主人公」という骨組が一緒だと思う。「多崎つくると~」のシロとクロは、「海辺のカフカ」の15歳と50歳の佐伯さんの姿と重なる。誰かの血が流れることで始まった2つの物語は、だれかが亡くなることで2つとも閉じた。2025/06/11
i-miya
49
ホシノさんの骨、背骨、ずれている、ちょっと痛むがいいですか。ナカタに引き込まれるようになってしまったホシノさん。死んだじいちゃん似。魚やヒルが空から降ってきます、明日、と警察に予言したナカタさん。カフカ、絵の中の少年に嫉妬しているのがわかる。カラス。大島さん。佐伯さんにあった才能は、どこへ?わしがカーネル・サンダースだ、ねじれ。「うっひふほひおふ」。石は神社の林の中。魚を降らせたナカタさん、もし降ったのが包丁だったら、謝ってもすまない。2009/06/18
キク
43
父の予言に立ち向かう少年と、猫と会話出来る代わりに本来の自分を失ってしまったナカタさん。2人は実際には一度も出会わない。様々に交わりながら出来る限りを尽くしたけど、死ななければ達成できないこともある。ナカタさんと旅をするホシノ君の「このたった10日のうちに、いろんな景色の見え方が随分違ってきたみたいだ。それまで面白いと思わなかった音楽が、なんていうのかね、ずしっと心に沁みるんだ。で、そういう気持ちを誰か、同じようなことがわかるやつと話せたらいいなとか思っちまうんだ。」読メで僕がやりたい事はこれなんだろうな2021/01/23