出版社内容情報
小津との本当の関係、唯一の恋、引退の真相――噂や伝説に埋れていた真実を鮮やかに甦らせた、類書とは一線を画す決定版の本格評伝。
小津との本当の関係、たったひとつの恋、経歴の空白、そして引退の真相……。その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。真偽の定まらぬままに―― 埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、若くして背負った「国民的女優」の名に激しく葛藤する姿だった。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。
内容説明
小津との本当の関係、たったひとつの恋、空白の一年、そして引退の真相―。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版本格評伝。
目次
原節子と会田昌江
寡黙な少女
義兄・熊谷久虎
運命との出会い
生意気な大根女優
秘められた恋
空白の一年
屈辱
孤独なライオン
求めるもの、求められるもの
「もっといやな運命よ、きなさい」
生きた証を
それぞれの終焉
つくられる神話
会田昌江と原節子
著者等紹介
石井妙子[イシイタエコ]
1969(昭和44)年、神奈川県生れ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。約5年の歳月を費やして『おそめ』(新潮文庫)を執筆。綿密な取材に基づき、一世を風靡した銀座マダムの生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
129
昭和の「国民的女優」原節子の評伝である。 半世紀もの間、沈黙を守り続けた その人生は その美貌と相まって 心に残る。 書中にある 戦中・戦後のモノクロ写真の 圧倒的な存在感が その類い稀なる美貌を 引立たせている。なぜ 突然引退したのか? そして 鎌倉での 半世紀を どう過ごしたのか?真実は わからないものの 昭和の映画史が 原節子とともに 蘇る…そんな作品だった。2021/07/19
どんぐり
67
昭和の銀幕を飾った伝説の女優の評伝。原節子が95歳で亡くなった翌年の刊行。本人へのインタビュー取材は叶わなかったようで、膨大な資料を渉猟し書かれたノンフィクションである。なぜ突然女優業を引退することになったのか、なぜ生涯独身を通したのか、その中で最も謎の多い義兄の熊谷久虎のこと、キャメラマンの実兄の不幸な事故、女優の白内障、そして小津安二郎監督や黒澤明監督との関係に迫る。本人の談話がないだけに、真実はいつまでも闇の中にある。そして映画は永遠に残る。2017/10/27
はる
51
圧倒的な存在感。まさに女優。だが、実際の彼女の姿はよく知られていない。幼少時から引退後の隠遁生活まで。彼女の意外な素顔を徹底的な調査で浮き彫りにする。望んで入ったわけではない映画界。自分の望む役と与えられる役のギャップに悩みながらも、自分の生き方を曲げない芯の強さが印象的だ。名作「東京物語」などの舞台裏の様子も興味深かった。小津安二郎と黒澤明の燃えるようなライバル心が凄い。2024/07/12
kaoru
40
一読して原節子は当時の日本映画界で生きるにはあまりにもスケールが大きく品格のある人だったのだなと思った。知的で自我の強い女を演じたがり、戦後の混乱期には買い出しに行き畑も作る。彼女の資質を見抜いたのは『白痴』『わが青春に悔いなし』の監督黒澤明で『羅生門』にも彼女を所望していたそうだ。だが今日彼女が最も知られているのは小津安二郎の『紀子三部作』の美貌のヒロインとしてだ。彼女の翼を奪ったと言える義兄の熊谷久虎の存在も重い。初恋の人と結ばれて幸せになれば私たちが知る原節子はなかったと思うと複雑な思いに駆られる。2020/09/06
fwhd8325
37
これまでに読んできた原節子さんの評伝は、小津安二郎との秘めた恋物語賭してかかれてきたものばかりだっただけに、この評伝は新鮮でした。同時に衝撃でもあります。「永遠の処女」と評され、現役時代のイメージがそのまま描かれてきたものよりも、人間的な側面を初めて感じる貴重な評伝だと思います。引退して、頑なに守り通したその生き方は、女優であることの意識の高さ、人間会田昌江の人生観への尊重が凝縮されているように思います。2017/02/05