出版社内容情報
少女の揺らぐ性。少年の淡い恋心。生と死のあわい。繊細な情感を描いた、『夏の庭』の著者による珠玉の作品集。
内容説明
話したかったことと、話せなかったこと。はじめての秘密。ゆれ惑う仄かなエロス。つないだ手の先の安堵と信頼。生と死のあわい。読み進めるにつれ、あざやかに呼び覚まされる記憶。静かに語られる物語に深く心を揺さぶられる、極上の傑作小説集。
著者等紹介
湯本香樹実[ユモトカズミ]
1959(昭和34)年、東京生れ。東京音楽大学音楽科作曲専攻卒業。小説『夏の庭―The Friends』は93年に日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同書は映画・舞台化されるとともに世界十ヵ国以上で翻訳され、97年にボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞に輝いた。2009年絵本『くまとやまねこ』で講談社出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
160
「高校生になった娘に」のキャッチフレーズで平積みしてあったのが気になり、手にとりました。私には高校生の娘はいませんが、6作からなる短編集で、確かに何作かは女子高校生が登場する作品なので、そこに関連のある方はいいのかもしれません。人間誰もが持つ密かな思い、話したかったことや話せなかったことなどを平凡な日常の中にさりげなく忍ばせて生きていく描写がとても穏やかでした。『夏の庭』や『ポプラの秋』で見せてくれた静かながら揺れ動く心情と『岸辺の旅』を彷彿させるステキな風景描写にしっかりとココロを癒してもらえました。2019/06/22
nico🐬波待ち中
105
青春期のほろ苦さ、自分の気持ちを上手く言い表せないもどかしさやジレンマ…大人の誰もがかつて辿ってきた道が6本の短編のあちらこちらに、静かに淡々と描かれている。ふと胸が苦しくなり切なくなって泣けてくる。人はみな色んなものを亡くし、それを振り返り思いを馳せながら、それでも前を向いて生きていく。湯本さんの描く物語にはよく大きな木が出てくる。どっしりとした大きな木が、昔から変わらない姿で同じ場所にそびえ立つだけで安らぎを与えてくれる。あの頃の焦れったい自分を思い出させてくれる優しい短編集だった。2017/11/19
(C17H26O4)
97
忘れてもよかったこと、忘れたくなかったこと。あらゆる出来事の上にも時は流れ、それらは思い出へと変わっていく。しばしば自分にとってとても重要性を帯びた思い出に。「僕は転轍機を動かしたのではないのだろうか」振り返ればそんな風に思える「ささやかな分岐点」があったことに気づくこともある。時の魔法は哀しみやうずきをもたらす思い出をも愛おしむ目線を与えてくれる。時が優しく流れるときにおこした穏やかで暖かな風に包まれるように感じながら読み終えた。 2019/10/13
はる
91
すぐ傍に感じられたのに、手を伸ばせば触れられたのに。二度とは戻らない懐かしい景色、懐かしい人。時を戻すことが出来たなら…。寂寥感の漂う短編集。登場人物たちの哀しみが自分のことのよう。共感するところが多く、幻想的な場面も違和感なく受け入れられた。私もそう、たとえ激しい痛みを感じても、また思い出を辿るんだ。2018/01/22
ベイマックス
79
6作の短編集。ちょっとだけ不思議な物語。2022/12/02
-
- 洋書
- The Twelve