出版社内容情報
「本当の自分」になるため、日本で初めて「女性の体」を手に入れた先駆者の孤独な闘い。芸能界と世間を疾走するノンストップ長篇小説
内容説明
モロッコで秀男はカーニバル真子の「最後の仕上げ」となる手術を受け、日本で初めて「女の体」を手に入れた。好奇と蔑みの目、喝采と屈辱を浴び、話題を振りまきつつ、やがて追い詰められていく。「自己」と闘う思春期から(『緋の河』)「世間」と闘う激動期を活写する完結篇。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年、北海道釧路市生まれ。2002年、「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、2007年、同作を収録した単行本『氷平線』でデビューした。2013年、『ラブレス』で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で直木賞を、2020年、『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
332
カルーセル麻紀をモデルにした物語の完結編だという。心に突き刺さる言葉にあふれた作品だった。モロッコでの壮絶な、男性器切断・手術は本当に命がけだったのだ。「女になりたかったのではない。”女の体”が欲しかった」。 行間から真実があふれ、気持ちが揺さぶられる。美輪明宏との対談シーンには笑わされ、二人の関係性が腑に落ちた。桜木紫乃にしか書けない人間ドラマ…。そして、ラスト5ページ。思わぬ展開に、涙が止まらなかった。ありがとう、桜木さん。2023/07/02
starbro
301
桜木 紫乃は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。3年前に読んだ『緋の河』の続編、女性の身体を手に入れて幸せになるはずが・・・ こうした経験をしないと誰も理解出来ないのかも知れません。カルーセル麻紀が79歳で、まだ現役なのが凄い(驚) https://www.shinchosha.co.jp/book/327726/2022/06/26
ゆいまある
209
緋の河の続編。カルーセル麻紀がモロッコで性別適合手術を受けるところから。言葉の通じない国で造膣手術から感染。この時の恐怖が長く尾を引く。読んでるうちにすっかり飲まれてしまって客観的な感想が出てこない。カルーセル麻紀も見事だが、桜木紫乃も見事。元気貰った。後悔することもきっと多かっただろうが、強靭な精神力で前を向いて生きた。そして多くの人に影響を与えたエネルギーの塊のような人。虚構の世界で生きた人を描くには確かにノンフィクションより小説のほうが向いている。若き日の藤圭子出てくるが、同じ事務所だったのね。2023/05/21
いつでも母さん
202
圧巻。何をどう思うかは人それぞれ。読みながら身体の芯が熱を持ってくる。読み終わってただただ胸がいっぱいだ。前作『緋の河』も良かったが、あれからの秀男の壮絶な歳月を、痛みと苦しみと僅かな解放を持ってここに昇華させた桜木紫乃に天晴れと言いたい。「本物のあたし」・・生きることは切ない。傍にマネージャー・舵田がいて良かったと心底思った。秀男を取り巻く人間ドラマ、お薦めです。2022/06/05
fwhd8325
180
その人生は唯一無二なるもの。読書である私はとても苦しく感じました。男でも女でもない私。その苦しみは、女の身体を手に入れたことからさらに大きくなっていく。そこの描写は強烈で、読み所であるけれど、苦しかった。数十年前、新宿二丁目に通っていた頃のあの子たちもそんな苦しみを持っていたんだだろう。2022/11/15