内容説明
断筆解除をしてみれば、世間は面妖なことばかり。狂牛病の牛を哀れみ、税務調査官の態度にあきれ、自民党の変貌を嘆き、酒鬼薔薇聖斗の噂に耳を欹て、ヒトゲノム解読を解読し、小中学生や男の化粧を断固支持し、隣家の火事を消し、柳美里裁判に物申す!「ならず者の傑物」筒井康隆が笑犬樓からこの時代を撃つ、獅子奮迅・単刀直入・呵々大笑のエッセイ集。
目次
1 笑犬樓の逆襲(断筆解除後の戦果を報告する;家を買う話は沙汰やみとなってしまった ほか)
2 阪神大震災はいまだ終わらず(犬とグッズと鍋;阪神大震災はいまだ終わらず ほか)
3 二十一世紀の新しい読者に向けて(萩原版『パプリカ』の完結を祝す;ゴダケンと珠子 ほか)
4 古典から今への美意識(古典から今への美意識―丸谷才一『輝く日の宮』;快い懐かしさのエッセンス―小林恭二『宇田川心中』 ほか)
5 「創作の秘密」から「昨夜の献立」まで(筒井康隆のすべてを知るための50問50答)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山田太郎
38
全然年取ったかんじしないのがすごいというか現役感覚すごいよな。悪口が芸になるのもこの人くらいだと感心する。2013/05/09
そうたそ
24
★★★☆☆ 21世紀になるかならないかあたりの時期のエッセイを収録。前作同様キレキレの内容。とにかく気に入らなければ容赦なく反論するさまがお見事というほど。しかも相手が反論できないくらいにしっかりとした反論をするんだから相手も困ったものだろう。何かと左翼色の強い文壇にあって、このゴリゴリいく感じの作家というのは珍しい。別に右翼とかそういう分類をするわけじゃないんだけど、最近となっては珍しいタイプの作家になったなあ、と。2017/10/27
ぺぱごじら
17
90年代中盤に出版業界の自主規制に大反発し断筆、その後出版社各社と『申し合わせ』を交わし、文筆界に復帰して以降の『噂の真相』誌連載。一連のやり取りに勝利を収めた余裕か、言葉に内包する毒気は相変わらずでもタッチは少し柔らか目。実際俳優業の筒井さんも凄みがあって面白かったので、もう暫く断筆しててもよかったのに、と当時は思ってたりしたのですが(笑)。2011/09/07
amanon
4
『噂の真相』が廃刊になって、もう20年近くの月日が経つのか…そういえば、この辺りから政治批判がやりにくくなったのかも?と考えると、何とも複雑な気持ちに。それはともかくとして、作家と俳優という二足の草鞋を履くだけでなく、その双方におけるマルチな活躍ぶりには驚かされるばかり。こういう人はもう出ないだろうな…また、本書に登場する人達に今は鬼籍に入った人が少なからずいるというのも、時代の流れを感じさせる。時代の流れといえば、いつのまにか、女子中高生からこれといったブームが起こらなくなったことに気付かされた。2020/09/25
吉右ヱ門
3
前回と打って変わって、なんだか人間が丸くなっていて驚いた!毒舌がソフトになっている!本書の中でご本人も穏やかになったとおっしゃってますが、やっぱり内容は多岐に渡っているし、言いたいことを言っているし読み応えのある一冊。前作は最初読みづらくて途中からすらすら。今回は逆で、ラストの方の解説みたいなところが読みづらいかも。いろんな物に興味があって、食い道楽で、行動力もあって、健康で。こんな70歳になら、なりたい(笑)2010/08/15