出版社内容情報
一本の電話が、一通の手紙が、一筋の雷が、ある一家の運命を変えた。どんでん返しの先に待つ衝撃のラスト……。著者史上最驚の一冊!
内容説明
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた一本の脅迫電話。それが惨劇の始まりだった。昭和の終わり、藤原家に降りかかった「母の不審死」と「毒殺事件」。真相を解き明かすべく、幸人は姉の亜沙実らとともに、30年の時を経て、因習残る故郷へと潜入調査を試みる。すべては、19歳の一人娘・夕見を守るために…。なぜ、母は死んだのか。父は本当に「罪」を犯したのか。村の伝統祭“神鳴講”が行われたあの日、事件の発端となった一筋の雷撃。後に世間を震撼させる一通の手紙。父が生涯隠し続けた一枚の写真。そして、現代で繰り広げられる新たな悲劇―。ささいな善意と隠された悪意。決して交わるはずのなかった運命が交錯するとき、怒涛のクライマックスが訪れる。
著者等紹介
道尾秀介[ミチオシュウスケ]
1975年、東京都出身。2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、作家としてデビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞を受賞。10年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞を受賞する。11年『月と蟹』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
501
道尾 秀介は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、横溝正史風伝奇ミステリでした。設定が平成のせいか、今一盛り上がりませんでした。大横溝正史の壁は高いということでしょうか?最近、何故か和歌山毒物カレー事件が露出しているのは、偶然の一致でしょうか? https://www.shinchosha.co.jp/book/300337/2021/06/17
bunmei
395
『雷神』という標題は著者らしく、言い伝えに纏わる、人知の及ばないパワーと結びつけて、事件を描いている。そのパワーが本作では雷。一方、真相に迫るに従い已むに已まれぬ人の業によって、心を抉り出すような物語の展開も、読者を引き込む。事件は、村の祭事に起きた女性の変死事件から、翌年の落雷事故と毒殺事件へと発展。30年の時を経て、改めてこの真相を突き止めようと村に戻ったのが、落雷事故に遭い、父親が毒殺犯の嫌疑をかけられ、村を去った姉弟と弟の娘。善意の為に隠蔽した悪意が交錯する中、見えてきた真実に運命を感じる。2021/06/22
青乃108号
359
物語の導入は良かった。これは面白くなりそうだと期待したりして。しかし読み進めているうちに気がついた。うかつだった。あの駄作【ソロモンの犬】を書いた作家の本だったのだ。気がついたのが遅く、止めるには既に費やした時間が惜しい。仕方ない、読もう。しかし物語はいつまでもひとところに停滞し、読む程にイライラがつのる。著者と俺の呼吸が全然あわない。結局最後まで読んだけどね。得るものは何もなくただ貴重な時間を失った、という喪失感に包まれながら【この作家の本は二度と読まない】と強く心に誓った。休日は終わろうとしていた。2022/01/28
旅するランナー
359
あなたに思い出してほしくない記憶があります。道尾ファンも納得できる、哀愁の土着ミステリーの新たな到達点! キノコと雷が恐ろしくなる、あまりに切ない殺人事件。私たちの優しさが悲しみを生んでしまうのです。2021/08/08
stobe1904
347
【道尾作品のミステリ】30年前に新潟の山村で起きた事件と15年前に起きた妻の交通事故死にまつわる脅迫が埼玉で小料理店を営む藤原幸人にふりかかるが…。30年前の事件の真相に大きなサプライズはないが、ミステリに重きをおいた建て付けで30年前に起きた事件を掘下げていく後半は読み応え十分。道尾作品を読むのは久しぶりだったが、以前のホラー色や見ていた景色が一変するような大きなヒネリを持つ作品ではなく、骨太なミステリだったのが意外だったが、レベルが高く丹念に作られた作品だった。★★★★☆2021/09/20