内容説明
強制収容所のユダヤ人の間で、一人の男の名が囁かれていた。多額の賄賂でナチスの要人をたらし込んだ実業家。女とコニャックに酔いしれてメルセデスを駆る道楽者。そして、ユダヤ人を救う唯一のドイツ人、オスカー・シンドラー。死に至る労働に明れ暮れる彼らにとって、ある“名簿”に載り、彼の軍需工場に移されることだけが生き残る道だったのだ―。感動のノンフィクション・ノベル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
244
スピルバーグ映画の原作。 映画の印象とは異なり、シンドラーの 道楽者の部分が伝わり、興味深い。 第二次世界大戦下のポーランドにおける ユダヤ人虐殺..この環境下で 狂気の時代に シンドラーはなぜユダヤ人を 救出できたのか?映画では よくわからなかったシンドラーの人脈が 克明に伝わる.. 残酷で絶望の収容所の日々の中で 差し続けた一筋のオスカーの光.. エピソードの「シンドラーグループ」との 交流が心に残る、本だった。2017/05/03
ヴェネツィア
156
凄まじいばかりの暴力。それはフィクションではなく、現実に人間が人間に対して行ってきたことだ。当時、ポーランドにいたユダヤ人たちは家も財産もすべて奪われたばかりか、日々、刻々、命の危険と向き合っていた。ほんのささいなこと、あるいは単なる気まぐれから、いとも簡単に射殺されてしまうのだ。それを免れたとしてもアウシュビッツに送られればガス室が待っていた。普通の人間性を持っていた(それは当時は得難いことだった)シンドラーによって救われた千数百人の人々。最後にイツァークやシュテルン等が生き延びたことを知って落涙。2016/08/26
ケイ
147
最初からシンドラーを持ち上げず彼の女性関係の奔放さや妻への不義理なども敢えて描いていく。その上で彼がなしたことを淡々と書き上げる。この作品は、彼に助けられたユダヤ人達からのインタビューから作り上げられた。なぜ彼はこれを為し得たのか。なぜ彼は親衛隊に捕まらなかったのか。やはり彼に協力した人が少なからずいたのではないか。シンドラーはナチスのあまりのやり方に憤慨し、彼らに従いたくはなかったのだろうが、リストを作っていく中で何人もの命が自分の手にかかっていることを痛感し、更に人道的な気持ちに傾いていったように思う2016/08/14
まふ
127
処世術に長ける一方、弱者を捨てない強い正義感の持ち主であったドイツ人オスカー・シンドラーによるユダヤ人救出・救済の物語。本人はナチスに対する御用商人であり、女性に目のないだらしない人物像であるところが英雄的ではなく意外であり興味を高めさせてくれる。その財産のほぼ全てを1200名以上のユダヤ人を救うため使ったという偉業を成し遂げた彼は、一方で著しく人間的であり、まさに「事実は小説よりも奇なり」であった。G680/1000。2025/01/09
優希
91
小説のような話ですが、全て実話なんですよね。第二次世界大戦、ナチスの独裁とユダヤ人迫害。これほど残酷なことが現実にあったことが信じがたいです。そんな時代にユダヤ人を救おうと立ち上がったシンドラーの行動に感銘を受けました。人種も宗教も関係なく、命という尊厳を守ろうとしたのでしょう。600万人ものユダヤ人が迫害された中で、シンドラーが救ったのは1200人と少ないかもしれませんが、それでも尊い命を救い、世界を救ったことは確かだと思います。受け止めがたい残酷な歴史であっても目を背けてはいけないのでしょう。2015/07/08