内容説明
〈負け犬〉のアーニーは17歳、唯一他人より優れているのは車の整備だけだった。そのアーニーが路傍にセールの札をつけて置いてあったオンボロ車に一目惚れしてしまった。両親の大反対を押し切り、バイトで稼いだ金を注ぎこんで、アーニーはこの車を手に入れた。赤と白に塗り分けた’58年型プリマス・フューリー。名はクリスティーン、だがクリスティーンはただの車ではなかった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
145
ホラーを期待して読み出したのだが、いい意味で裏切られた。 書かれているのは、その当時のアメリカの高校生たちの日常なのだ。 多分に作家が学生時代に感じていであろう劣等感や疎外感なんかが、生き生きと描かれている。 もちろん、友情や恋愛なども。 でも、さすがこれだけでは終わらないのが、この作家のいいところ? 第一部が終了して、第二部へ。 クリスティーン(自動車)に絡む因縁が少しずつ明らかになってきて…。 下巻では、一体どうなるのか。 2020/10/12
Tetchy
120
アメリカ人と自動車との関係の深さは日本人よりももっと深いように思える。キングが自動車をモチーフにした本書は今まで書いてきた“意志持つ機械”譚のこの時点での集大成になる作品と云えるだろう。何の前知識もなく、この作品を読めば、スクールカーストの最下層に位置する17歳の少年が1台の古びた車と出遭うことで負け犬的人生を変えていく物語、青春グラフィティのように読めることだろう。物に魂が宿るのは正直に云って子供の空想の世界だ。そんな子供じみた発想もキングの手に掛かれば実に面白くも恐ろしい話にどんどん変わっていく。2018/05/23
アナーキー靴下
84
キング原作の映画では『キャリー』の次に好きなので読んだ。映画はクリスティーンが可愛くて仕方なく見えてくるB級ホラーと記憶しているけど、原作は全然違う印象。ティーンエイジャーの機微が鮮やかに表現された青春小説、それもとびきり上質の。過去を振り返るデニスの視点は、因果の後付けが錯綜して胸が苦しい。相手を一人の人間として尊重することは難しい。大切な人が道を踏み外そうとしているときに止められないのは、相手を尊重する愛ゆえで、でもそういう愛し方をしなきゃいけなかったことに気付くのが遅すぎたからなんだと思う。2022/05/02
chiru
83
気弱で冴えない高校生アーニ―がプリマス(クリスティーン)に魅入られ狂気を孕む過程を、彼の親友デニスを語り手にして描く。『シャイニング』と同じ路線。 シャイニングは「ホテル」。 この作品は「車」という無機物が、命を吹き込まれたように意志を持ち、人を呑み込み人格を変えていく。 物語の根幹に、大好きな親友のどんな変貌も拒絶せず受け入れ、絶えず支え続けるデニスの友情があるからこそ、クリスティーンの禍々しさが際立つんだと思う。 ★4.52019/03/02
リードシクティス
19
冴えないいじめられっこの高校生アーニーはポンコツの中古車「クリスティーン」にひと目ぼれし、周囲の反対を押し切って購入。アーニーの友人や家族はみな一様にクリスティーンを忌み嫌うが、アーニーは「彼女」にのめり込み、そして変貌していく。再読。10代終盤か20代初めの頃にこれを読んで無性に車が欲しくなった覚えがあるのだが、今思うとその感覚はおかしいと思う。個人的にキング作品は訳の良し悪しがはっきりしていると思っているんだが、これは本当に訳がよくて読みやすい。物語的には上巻は大部分青春小説。恐怖は下巻が本番かな。2016/07/24