内容説明
19世紀末のパリとフィレンツェを舞台に、浮華な社交界を逃れ、真実の愛と自由を求めた貴婦人の、官能的で、はかない恋愛模様。アナトール・フランスの絶妙な筆が描く、人間の感情の機微、流行の最先端をゆく、きらびやかな会話の数々…。杉本秀太郎による完全新訳。
著者等紹介
フランス,アナトール[フランス,アナトール][France,Anatole]
本名アナトール・フランソワ・ティボー。1844年4月パリ生まれ。生家はマラケー河岸の古書店「フランス」。筆名はこの店名に由来。『舞姫タイス』(1890)により文名を馳せ、世紀末より20世紀にかけて長短の小説、伝記、文芸批評、文明論。筆致はつねに巧緻、辛辣、温順、大胆を兼ね備える。1898年、ゾラとともにドレフュス弁護。1921年ノーベル賞。24年10月没、80歳
杉本秀太郎[スギモトヒデタロウ]
1931年1月京都生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。国際日本文化研究センター名誉教授。日本芸術院会員。1977年『洛中生息』で日本エッセイストクラブ賞、78年『文学演技』で芸術選奨文部大臣新人賞、88年『徒然草』で読売文学賞、96年『平家物語』で大仏次郎賞
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感想・レビュー
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やいっち
61
愛欲、痴情の場面が随所にある。 しかも、今時のエロ小説や愛欲小説のように(といっても、学生時代は散々、それらしきエロやエロチックな小説などを物色し読み漁ったが、社会人になってからは、何故かあまり手が出なくなってしまった。なので、自慢できるほど、比較対照できるほど読んだわけではないのだが)、性愛の場面を即物的に具体的に描くのではなく(小説版のAVみたいに)、読者が想像を…妄想を逞しくするべく、描かれてる。2009/09/28
しょう
43
何不自由なく暮らしている美女のテレーズ。父に従って結婚した夫のマルタンの地位も高い。暇を持て余してか自邸でサロンを主催している。夫との関係が冷え切っている中で、テレーズが他の男に心を動かされてしまうのはある意味では当然の帰結と言えるのかもしれない。テレーズが熱を上げた年下のロベールはテレーズの心を解さず、ありていに言えばただのろくでなしとなっている。他の男とも情事を重ねても結局は似たようなことでテレーズが救われる事はない。2023/09/12
noémi
11
テレーズはもうすぐ20世紀にもなろうかというフランスの社交界一の美女だ。父のいうなりに結婚した夫との間には、夫婦生活というものは全くない。類稀な容姿、教養を備えながら、真の愛には恵まれず、不遇を託つテレーズ。だから情人持つ事で孤独を癒そうとする。が、男は身勝手で女の苦悩など察することさえない。女の前に、また新たな男が現れた。お互い体が溶け合うほどに情欲に溺れた二人だが、女の過去を知ると、たちまち嫉妬に狂って決して許そうとはしない。男たちは女を一体何だと思っているのか。愛を必死になって乞う女の姿が哀れ。2011/06/23
takao
2
ふむ2024/02/16
はりゅうみぃ
1
今では珍しくないだろうタイプながら、100年以上前にこういう女性を描く意義を考えると深い2009/07/26