内容説明
愛する者をすべて喪ったハンニバルは、無感動な孤児院生活を過ごす。そんな彼を引き取ったのはフランス人の叔父ロベール。ハンニバルはその妻である日本人女性、紫夫人の薫陶に与るとともに、その魅力に強く惹かれてゆく。だが、凶事の悪夢は去らない―。最年少でパリの医学校に進んだ彼は、持てる英知と才覚を駆使して記憶の一部を取り戻し、復讐すべき獣たちを狩りはじめる。
著者等紹介
ハリス,トマス[ハリス,トマス][Harris,Thomas]
テネシー州生れ。ベイラー大学卒業。「ニューズ・トリビューン」紙記者、AP通信社デスクを経て1975年、『ブラックサンデー』で作家デビュー。その後は『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』『ハンニバル』及び『ハンニバル・ライジング』という、所謂“レクター四部作”しか著していない
高見浩[タカミヒロシ]
東京生れ。出版社勤務を経て翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
412
下巻では、幼くして無残にも惨殺された妹ミーシャへのハンニバルの鎮魂と復讐の劇である。ただ、残念ながら後年のハンニバルに比べると徹底性を欠くようだ。描写の細密度と緊張感の持続という点においてもそうである。これではこれまでハンニバルを支持してきた読者は物足りない思いを抱くのではないか。ともかく、これでハンニバルはヨーロッパでの少年時代に決別しボルティモアに向かう。そして、それは一つの時代の終わりでもあった。なお、ここでも『源氏物語』をはじめとしたジャポニズムは継続するが、紫夫人の退場などは唐突に過ぎるだろう。2022/01/17
こーた
231
医学生となったハンニバル青年は、絵画の才を活かし詳細な臓器の模写に励み頭角をあらわす。死刑囚との対話。催眠剤をつかって記憶の宮殿へわけ入り、爆風で血塗られた雪道を抜け離れの狩猟ロッジへ。甦る失われた断片。リトアニアへの帰郷。ついに手にした悪党たちの認識票。悲しい復讐劇が幕を開ける。その結末で明らかとなる真実は、あまりに残酷だ。どこでまちがえた?いや、まちがえてなどいない。過去を喰らうためには、青年は怪物になるしかなかった。かくて博士の記憶の宮殿はその扉を閉じ物語は円環をなす。幾ばくかの謎を残したまま。2020/08/03
のっち♬
149
下巻は精神の遍歴に復讐劇が追加。直線的進行や敵の造形は至ってレトロ。対峙時の台詞や隙のレクターらしからぬ平凡さ、紫夫人の退場の突飛さは"変奏"と言えども幾らかファンを幻滅させそう。一方、敵が放つ今際の際の一言から長い冬へ繋がる展開は意表を突かれた。怪物の由来をどこまで解き明かすかの躊躇いが甘さに、度重なる映画化が演出重視に繋がったような仕上がり。日本情緒が終始浮きっぱなしなのも精度よりもそこに起因すると思う。日本とリトアニアの選択は歴史的観点でも面白味があったが、毎回ハードルを上げる至難を痛感していそう。2023/07/15
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
95
ハンニバル・レクターのエピソード・ゼロ。無意識のうちに封印した過去の悲しい記憶がこじ開けられた時、ハンニバルの復讐劇が始まる。愛する妹の仇であり、ナチの戦争犯罪者達を一人一人追い詰め、復讐をする様は怖いほどだ。彼が尊敬し心から愛する日本人の叔母、紫夫人の存在が印象的でもある。★★★+2019/10/12
鱒子
77
下巻は青年レクターの復讐物語。うーん、そもそもハンニバル レクターがチートキャラなのは分かりきっているので、ハラハラドキドキを感じない。ファン必読の書の域を出ないかも。それでもギラリと光を放つシーンもあります。特にp194 警視がレクターのことを言い当てた台詞はキリッと決まってます。2022/03/21
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