内容説明
若くして結婚した父と母は、娘が生まれるとまもなく離婚。成長した娘は大学生となり、父は離れた町で牧師として新しい家庭を築いた。そして、運命の再会。父は娘の美しさに目を奪われ、娘は父の登場に心を奪われる。やがて二人は、近親相姦という暗い谷底へと落ちていった―全米を震撼させたベストセラー。著者自身の実体験を真摯に綴った、人間存在の根源に迫るノンフィクション。
著者等紹介
ハリソン,キャスリン[ハリソン,キャスリン][Harrison,Kathryn]
1961年生れ。大学卒業後、ニューヨークの出版社ヴァイキングで編集アシスタントを務める。’91年Thicker than Waterでデビュー。’97年春に『キス』を刊行しベストセラーに。小説家の夫コリン・ハリソンと、3人の子どもとともにニューヨーク在住
岩本正恵[イワモトマサエ]
1964年東京生れ。東京外国語大学英米語学科卒。翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
37
ふと思い立ち実家より持ち帰り久方ぶりの【再読】。当事者によるノンフィクションながら冷静で美的な文体に違和感が拭えずにいたのですが、改めて読み返し、斯様な作品にまで昇華させることができた筆者の心の変遷に圧倒されました。然し乍ら実子の半生を滅茶苦茶にした父母の身勝手さに腑が煮える程憤りを覚え、再読に至っても尚この美しい文体に添うことはできませんでした。2014/08/31
さく
18
図書館に置いてある籤を引いて、書いてある番号の本棚から本を選ぼう、という企画がありました。指定された本棚から息子が選んでくれたのがこちら。実父との近親相姦を描いたノンフィクションとのことで、攻めた本を選んだなぁ、と思いながら読みました。生々しい表現はなく、心情を丁寧に描いたものだったので、訳文の美しさを実感しながら読むことができました。にしても、父、気持ち悪すぎ!主人公は、母から愛されなかったせいで、父の歪んだ愛情を受け入れ恋してしまう。近親相姦というよりは、母との関係性がテーマのような気がしました。2025/01/19
mer
14
切ない、なんて感情を通り越してもう後戻りができないくらいに心が締め付けられるような形容しがたい気持ちになる。不穏で不安定な空気がずっと漂っていて、読んでいる側も落ち着かなかった。2020/09/26
猫のゆり
11
作者が誰よりも愛されたかったのは母で、父との関係はその空白を埋めるためだったのか?感情を一切排し、現在形で淡々と綴った文章は、逆にこの人はどれだけ苦しんでいたんだろうと想像せずにおれず、辛かった。愛と、所有する・される関係とは違うはずなのに、この父親にはそれが分からず・・。近親相姦というショッキングな題材ではあるけれど、根底にあるのは人間として生きていく上での意味というか、幼少時に親の無私の愛を勝ち得なかったことがどんな悲劇を招くのかといった重いもの。2010/04/23
Ayah Book
8
作者の実体験だという。きれいな文章だが、描かれるのはネグレクトと性的虐待。処女を失うシーンはまるでホラー。子供時代に愛を与えてもらえなかった悲劇。逃げる母を追い求める娘が哀れだ。まさに「残酷な神は支配する」である。2018/03/02